音は、テクニックからは生まれない
音楽を学んでいると、
「もっとうまく弾きたい」
「もっと正確に歌いたい」
という気持ちが
自然と強くなっていきます。
音階を速く弾けるようになる。
難しいコードが押さえられるようになる。
高い音が出せるようになる。
こうした技術の積み重ねは、
確かに音楽を続ける上で必要なことです。
でも、ある瞬間から、
こんな感覚に襲われる方がいます。
「うまくなったはずなのに、
自分の音が薄くなっている」
「技術は上がったのに、
聴いていて何も伝わってこない」
これは、
音楽を真剣にやってきた方ほど
陥りやすい落とし穴です。
音楽は、あなたが経験してきたことから生まれる
では、本物の音は
どこから生まれるのでしょうか。
答えはとてもシンプルです。
音は、あなたが
これまでに経験してきたことから
生まれます。
悲しかったこと、
つらかったこと、
嬉しかったこと、
胸が震えるほど楽しかったこと。
あなたがこれまで生きてきた中で
心に刻まれたすべての瞬間が、
あなたの音の素材です。
それ以外に、
あなただけの音をつくる素材はありません。
「素直に音にする」ということ
でも、
経験を音にするのは
意外と難しいことです。
多くの方が無意識のうちに
「自分の感情」を脇に置いて
演奏しています。
「楽譜通りに弾かなきゃ」
「先生に教わった通りに歌わなきゃ」
「変な音を出したら恥ずかしい」
そうやって自分を抑え込んでいるうちに、
音から「自分」が消えていきます。
本当に大切なのは、
うまく弾くことではなく、
自分の中にある思いを
素直に音にしてあげることです。
悲しかった経験を弾くときには、
その悲しさを音に許す。
嬉しかった経験を弾くときには、
その喜びを音に解放する。
その「素直さ」が
音楽に命を吹き込みます。
つらい経験ほど、音の深さになる
不思議なことに、
つらかった経験や悲しかった出来事ほど、
音楽に深さを与えてくれます。
失ったもの、
叶わなかった想い、
言葉にできなかった気持ち。
そうした経験を抱えて生きてきた方の音には、
若い頃には絶対に出せなかった
厚みが宿ります。
ジャズの巨匠たちの晩年の演奏が
あれほど胸に迫るのは、
技術が向上したからではありません。
長い人生で重ねてきた経験が
音の中に染み込んでいるからです。
あなたが今まで感じてきた痛みは、
決して無駄ではありません。
それらすべてが、
あなたの音を豊かにする
かけがえのない素材です。
嬉しかった経験も、同じくらい大切
もちろん、
悲しい経験だけが
音の素材になるわけではありません。
嬉しかった瞬間、
誰かに優しくしてもらった日、
胸が高鳴った景色、
笑い声に包まれた時間。
そういった「光」の経験も、
音の中で輝き出します。
明るい曲を弾くとき、
あなたが本当に嬉しかった瞬間を
思い出してみてください。
その記憶が音に乗ったとき、
同じ楽譜から出てくる音が
まったく違う色を持ち始めます。
経験は、すぐには音にならない
ただし、
経験はすぐに音になるわけではありません。
つらい出来事の最中にいるとき、
そのつらさを
そのまま音にすることは難しいものです。
少し時間が経って、
その経験を自分の中で
静かに見つめられるようになったとき、
初めて音の素材として
使えるようになります。
だから、
今すぐ深い音が出なくても焦らないでください。
あなたが生きていく中で、
音は少しずつ熟成していきます。
10年後のあなたの音は、
今のあなたには絶対に出せないものを
持っているはずです。
技術は、思いを乗せる「器」
誤解しないでいただきたいのは、
技術が要らないということではありません。
技術は、
思いを乗せるための
「器」です。
器がしっかりしていなければ、
どれだけ豊かな思いがあっても
音として届きません。
でも、
器ばかりを磨いて
中身を入れ忘れている演奏が、
残念ながらたくさんあります。
技術と感情は、両輪です。
どちらも必要で、
どちらかだけでは音楽になりません。
もし今、技術ばかりを追いかけて
表現が薄くなっている感覚があるなら、
少しだけ立ち止まって、
自分の中にある経験を
見つめ直してみてください。
あなたの人生を、音にしませんか
あなたが今まで生きてきた時間は、
かけがえのないものです。
そこで感じてきた喜びも、悲しみも、
すべてがあなたの音の素材であり、
誰にも真似できないあなたの個性です。
でも、
その経験を音に変える方法は、
独学ではなかなか見つかりません。
「ここで自分を出していい」
「その音はあなたらしい」
と受け止めてくれる人がいるかどうかで、
音楽との向き合い方は
大きく変わります。
サヴァサヴァは、
あなたの中にある思いを
音に変えていく場所です。
正解を教えるのではなく、
あなたの経験を
あなたの音にしていく時間。
もし今、
技術と表現の間で迷っている方がいたら、
ぜひ一度スタジオへ来てみてください。
あなたの人生を、
あなたの音楽にしていきましょう。
Music Space サヴァサヴァ
野口 尚宏

