アドリブの前に、「型」を覚える。ボイシングが作る、最強の骨格

左手で青く強固な幾何学模様(ボイシングの骨格)を作り、その上を右手の黄金の光(アドリブ)が自由に舞う様子:ボイシングはアドリブの基礎

「あんな風に自由にアドリブが弾けたらいいな」
そう憧れてジャズピアノを始めたものの、
いざアドリブをしようとすると、何を弾いていいか分からず途方に暮れてしまう。
そんな経験はありませんか?

アドリブのフレーズは星の数ほどあり、
それを一つ一つ暗記しようとするのは、
地図を持たずに大海原に出るようなものです。

迷子にならないための「地図」を手に入れる

アドリブは無限ですが、
実は**「伴奏のボイシング(音の重ね方)」のパターンは、ある程度決まっています。**

Aフォーム、Bフォームといった基本の型や、
よく使われるテンションの積み方。
これらは「有限」です。
まずは、この限られたパターンのボイシングを徹底的に覚え、手癖にしてしまうこと。
これが、実はアドリブ上達への一番の近道なのです。

骨があるから、肉付けができる

なぜ、伴奏を覚えるとアドリブができるようになるのでしょうか?
それは、ボイシングが音楽の「骨格(スケルトン)」だからです。

「この和音の時は、この音が鳴っている」
という骨組みが頭と指に入っていれば、
アドリブはその骨組みに「肉付け」をする作業に変わります。
「今のボイシングのトップノートが『D』だから、
そこをターゲットにフレーズを作ろう」といった具合に、
明確な目的地が見えてくるのです。

骨格がないクラゲは水に流されるだけですが、
骨格がある動物は自分の意思で走ることができます。
ピアノも同じです。

しっかりとしたボイシングという「型」が体に入っているからこそ、
右手はその上で安心して遊び、飛び跳ねることができるのです。

華やかな右手のアドリブに目を奪われがちですが、
まずは地味な「左手の型」を愛してあげてください。
その積み重ねが、やがてあなたを自由なアドリブの世界へと連れて行ってくれます。

野口 尚宏