歌声には“いまの自分”が映し出される
歌うとき、私たちは意識していなくても
その瞬間の気持ちが声に表れています。
嬉しさ、緊張、不安、優しさ、迷い――。
それらは隠そうとしても、
息の速度や声帯の緊張、音色の変化に自然と反映されます。
これはとても人間らしい現象で、
歌声そのものがあなたの“今”を映し出す鏡になります。
声は心の拡張。言葉より先に気持ちが伝わる
私たちは普段、
話し声や相手の表情で気持ちを感じ取っています。
音楽も同じです。
① 音には表情がある
・少し震えた声は、優しさや迷い
・芯のある声は、決意や落ち着き
・柔らかい声は、思いやり
・明るい声は、気持ちの軽さ
こうした“音の表情”は、
意識して作るものではなく
その人の心の状態から生まれます。
② 感情は息と一緒に声へ流れ込む
声は息で作られるもの。
だから、
- 息が詰まる日
- 深く呼吸できる日
- 少し不安が残る日
その日その日の呼吸が、
そのまま音に反映されます。
これは嘘のつけない部分であり、
音楽が心を動かす理由でもあります。
音楽は“音で行うコミュニケーション”
歌声を通して気持ちが伝わるのは、
決して特別なことではありません。
私たちは日々、
声のトーン・抑揚・間・表情を使って
お互いの気持ちを察しながら生活しています。
音楽もそれと同じで、
“音によるコミュニケーション”
を行っているのです。
① 正確さよりも “誠実さ” の方が届く
完璧に歌えることよりも、
その人の“誠実さ”が伝わる音の方が
聴く人の心に届きます。
どんなに技巧的に歌っても、
心が追いついていなければ
どこか空虚に聞こえてしまいます。
逆に、
少しつまずいても
一生懸命に届けようとする歌は
音以上のものを伝えてくれるのです。
② 心が整うと声も整う
歌声は心の状態を反映しますが、
逆に言うと、
心が整うと声も整っていきます。
呼吸がゆっくりになると
音が柔らかくなり、
気持ちが落ち着くと
声も自然と安定します。
歌うことは、
自分の心を整える時間でもあります。
歌声は“心そのもの”。だからこそ面白い
歌声には、嘘がつけません。
今の自分をそのまま表します。
それは欠点ではなく、
むしろ 音楽の最も人間らしい魅力 です。
- 嬉しい日は明るい声
- 寂しい日は少し細い声
- 落ち着いた日は深い声
- 新しい一歩の日は少し震える声
そんな変化を楽しみながら歌えると、
音楽は“自分を生きる時間”になります。
声はその日のあなたの”今”
歌がうまく歌えないと感じる日、
声がうまく出ない日があっても大丈夫です。
その声こそが、
その日のあなたの“今” だからです。
歌声は心の姿をそのまま映し、
誰かの心にそっと寄り添っていきます。
音で伝えるコミュニケーションを楽しみながら、
ぜひ自由に歌ってみてください。
野口 尚宏

