ボーカルの役割は「歌うだけ」じゃない。曲のすべてをコントロールする、音楽の「船長」になろう。

温かみのある水彩画風のイラスト。スタジオの中央でマイクを持つ女性ボーカリストが、自信と温かい笑顔で立っている。周囲のピアニスト、ベーシスト、ドラマーが彼女を信頼して見つめ、音を合わせている。ボーカルから光の糸が広がり、バンド全体を導く「船長(コンダクター)」としての役割を表現している。画像下部には「ボーカルは、音楽の「船長」。」というテキストが書かれている。

「ボーカル(歌手)」という言葉を聞いたとき、
どのような役割をイメージしますか?
多くの人は「バンドやピアノの伴奏に合わせて、
主役のメロディを気持ちよく歌う人」と答えるかもしれません。

もちろんそれも正解なのですが、
もしあなたが本物の自由な音楽表現を目指すのであれば、
少しだけ意識を変える必要があります。
あらかじめ決まったテンポで流れるカラオケの音源に、
ただ自分の声を「乗せる」だけ。
伴奏が引っ張ってくれるのを待つ「お客様」のような状態から、
一歩踏み出してみませんか。

本当のボーカルの役割は、
ただ用意された枠の中で歌うことだけではありません。
曲全体のすべてを見渡し、コントロールする力を持つことなのです。

生のアンサンブルやセッションにおいて、
ボーカリストは例えるなら「船長」であり「オーケストラの指揮者」です。

今日のこの曲は、どんな「テンポ(速さ)」で歩き出したいのか。
このフレーズは、どんな「リズム」の揺らぎで感情を表現したいのか。
Aメロの「サウンド(音量や音色)」はどれくらい密やかにして、
サビに向けてどう「構成(ドラマ)」を組み立てていくのか。

これらすべてを、ボーカルが自らの声と息づかいで決定し、
周りの楽器陣に「今日はこういう景色を見に行くよ!」
と提示しなければなりません。
ピアニストやベーシストは、そのボーカルの「意志」を敏感に汲み取り、
船が最も美しく進むように風を送り、波を整えてくれるのです。

「そんな、全部をコントロールするなんて難しそう…」
と身構える必要はありません。
言葉にすると難しく聞こえますが、
実はとてもシンプルで身体的なことです。

例えば、曲の歌い出し。
あなたが大きく深く息を吸い込めば、
バックの演奏はゆったりとした雄大なテンポで始まります。
あなたが短く鋭く息を吸えば、
演奏はエッジの効いたタイトなリズムで応えてくれます。

「自分は今、この曲をこんな風に表現したい」
という確固たるイメージを持ち、それを恐れずに音に乗せること。
あなたが遠慮して「伴奏に合わせておこう…」と縮こまってしまうと、
船は行き先を見失ってしまいます。
あなたが自信を持って舵を握ったとき初めて、
周りの音も生き生きと輝き出し、アンサンブル全体に魔法がかかるのです。

岸和田にあるMusic Space サヴァサヴァのボーカルレッスンでは、
「正しく歌う」ことのさらにその先にある、
「音楽をコントロールする喜び」をお伝えしています。

最初は戸惑うかもしれません。
しかし、自分が発したちょっとしたニュアンスの変化によって、
周りのピアノやドラムのサウンドが劇的に変わり、
曲全体の景色が動く瞬間を一度でも味わってしまえば、
もう元のお客様状態には戻れなくなるはずです。

ただの「歌い手」から、音楽のすべてを見渡す「表現者」へ。
あなたの中に眠るコンダクター(指揮者)の力を、
スタジオで一緒に目覚めさせていきましょう。

野口 尚宏