コードを丸覚えせず、音の距離で聴く

暖かな光の部屋で、大人の男性が一台のアップライトピアノの前に座り、楽譜を見ずにコード進行の構造を耳で確かめている水彩アニメ風イラスト。鍵盤の上には黄金の音の糸が3rd、4th、5th、I、II、V、Iなどの淡い記号とともに浮かび、音と音の距離やコードの役割が見えるように表現されている。下部中央に「音の距離が見えると、音楽は深くなる。」という白い文字が入っている。

コードを丸ごと覚えようとして、音楽が見えにくくなることはありませんか

曲を練習していると、
コードを一つひとつ覚えようとすることがあります。

C。
Am7。
Dm7。
G7。

あるいは、
Fmaj7。
B♭7。
Em7♭5。
A7。

もちろん、コードネームを覚えることは大切です。

コードネームが読めなければ、
曲の流れを追うことは難しくなります。

ただ、コードを名前だけで丸ごと覚えようとすると、
音楽の構造が見えにくくなることがあります。

なぜ、そのコードがそこにあるのか。

前のコードから、
どれくらい音が動いているのか。

次のコードへ、
どんな力で進もうとしているのか。

そこが見えてくると、
コードはただの記号ではなくなります。

音と音の距離、
つまりインターバルとして聴こえ始めるのです。

コードネームは、音楽の入口になる

C、Dm7、G7、Fmaj7のようなコードネームは、
音楽を整理するための大切な記号です。

それを見ることで、
どの音を土台にしているのか。

どんな響きの種類なのか。

メジャーなのか、マイナーなのか。
セブンスがあるのか。
テンションを加えられるのか。

そういうことを素早く把握できます。

ただ、コードネームだけを追っていると、
曲ごとに別々の情報として覚えることになりやすいものです。

この曲ではCからAm7。
別の曲ではE♭からCm7。
また別の曲ではGからEm7。

一見すると違うコード進行に見えます。

でも、度数で見れば、
同じような動きをしていることがあります。

コードネームは入口です。

そこから、
音と音の距離や、
曲の中での役割へ進んでいくことで、
音楽の見え方は少しずつ変わっていきます。

3度、4度、5度で見ると、音の関係が見えてくる

音楽を深く理解するうえで、
インターバルはとても大切です。

インターバルとは、
音と音の距離のことです。

3度。
4度。
5度。
半音。
全音。

こうした距離で音を見ると、
コードやメロディーは、
ただの音名の並びではなくなります。

CからEは3度。
CからFは4度。
CからGは5度。

このように考えると、
音がどのくらい離れているのか、
どんな響きの関係を持っているのかが見えてきます。

コードも同じです。

ただC、E、Gと覚えるのではなく、
ルートから3度、5度が重なっていると見る。

ただCmと覚えるのではなく、
3度の響きが変わることで、
明るさや暗さが変わると聴いてみる。

そうすると、
コードは指の形ではなく、
音同士の距離として感じられるようになります。

そこから、音楽は少し立体的に見えてくるのではないでしょうか。

ローマ数字で見ると、曲の骨組みが分かる

コード進行を理解するとき、
ローマ数字でアナライズすることがあります。

Ⅰ。
Ⅱ。
Ⅲ。
Ⅳ。
Ⅴ。
Ⅵ。
Ⅶ。

これは、キーの中で、
そのコードが何番目の役割を持っているかを見る方法です。

たとえば、Cメジャーのキーでは、
CはⅠ、DmはⅡ、GはⅤとして見ることができます。

同じように、E♭メジャーのキーでは、
E♭がⅠ、FmがⅡ、B♭がⅤになります。

コードネームは違っていても、
ⅠからⅡへ行き、Ⅴへ向かうという構造は、
同じように見ることができます。

この見方ができると、
曲ごとにコードを丸暗記する必要が少しずつ減っていきます。

この曲はキーが違うだけで、
実は同じような骨組みで動いている。

この部分は、
一度遠くへ行ってから、
またⅠへ戻ろうとしている。

そういう構造が見えると、
曲の中で自分がどこにいるのかが分かりやすくなります。

丸覚えではなく、移動できる理解へ

コードを丸覚えしていると、
キーが変わったときに戸惑うことがあります。

Cで覚えていた曲を、
E♭で演奏する。

Fで歌っていた曲を、
A♭に移調する。

そのとき、
コードネームだけで覚えていると、
まったく別の曲のように感じてしまうことがあります。

でも、度数やローマ数字で理解していれば、
音楽の骨組みを保ったまま、
別のキーへ移ることができます。

ⅠからⅥへ。
ⅡからⅤへ。
ⅣからⅠへ。

その関係が見えていれば、
音名が変わっても、
曲の流れを見失いにくくなります。

これは、暗記から理解へ移ることでもあります。

ただ覚えたコードを再生するのではなく、
今どんな役割のコードが鳴っているのかを聴く。

その感覚が育つと、
音楽はずっと自由になります。

構造が見えると、アドリブも怖くなくなる

アドリブが難しく感じる理由の一つは、
今どこにいるのか分からなくなることです。

コードが次々に変わる。

どの音を選べばよいのか分からない。

気づいたら、
曲の流れから外れているように感じる。

そういう不安があると、
音を自由に出すことは難しくなります。

でも、コード進行をローマ数字で見られるようになると、
曲の中での現在地が少し分かりやすくなります。

今はⅡ。
次はⅤ。
その先でⅠへ帰る。

そう見えてくると、
音を選ぶときにも、
ただ手探りで弾くのとは違う安心感が生まれます。

もちろん、理論だけでアドリブができるわけではありません。

実際に音を出し、
聴き、
試し、
間違えながら身につけていく必要があります。

ただ、構造が見えていると、
間違えたあとに戻る場所も見つけやすくなります。

理論は、
自由を縛るものではなく、
戻ってこられる場所を増やしてくれるものなのだと思います。

音楽理論は、音を楽しむための地図になる

音楽理論というと、
難しい知識のように感じる方もいるかもしれません。

コードネーム。
インターバル。
ローマ数字。
機能。
転調。
代理コード。

言葉だけを見ると、
少し硬く感じることもあるでしょう。

でも、本来それらは、
音楽を難しくするためのものではありません。

なぜ、このコードで胸が少し明るくなるのか。

なぜ、この進行で帰ってきた感じがするのか。

なぜ、この音を選ぶと、
少し外へ出たように聞こえるのか。

そういう感覚を、
後から言葉や記号で確かめるための地図でもあります。

サヴァサヴァで大切にしている「論理という地図」は、
正解を押しつけるためのものではありません。

自分の耳で感じたことを、
もう少し深く理解するための道具です。

曲の構造が分かると、聴く楽しみも変わる

コード進行を構造として見られるようになると、
演奏する楽しみだけでなく、
聴く楽しみも変わります。

今、どこへ向かっているのか。

この響きは、
なぜ少し浮いた感じがするのか。

ここでⅠへ戻るから、
安心感が生まれるのか。

このⅡ、Ⅴの流れがあるから、
次のコードが自然に聴こえるのか。

そういうことが少しずつ分かってくると、
曲を聴く耳が変わっていきます。

ただ心地よい、という感覚の奥に、
どんな構造があるのか。

ただおしゃれに聴こえる、という響きの中に、
どんな音と音の距離があるのか。

そこが見えてくると、
音楽はさらに面白くなります。

理論を学ぶことは、
感覚をなくすことではありません。

むしろ、
感じていた音楽を、
より深く味わえるようになることなのだと思います。

音の距離で覚えると、音楽は立体になる

コードを名前だけで覚えることにも、
もちろん意味があります。

でも、そこから一歩進んで、
音と音の距離で聴いてみる。

コード進行を、
ローマ数字で構造として見てみる。

そうすると、
曲はただのコードの並びではなくなります。

近づく音。
離れる音。
緊張する響き。
戻ってくる流れ。
まだ先へ進みたがっているコード。

そういうものが、
少しずつ聴こえてくるようになります。

音楽は、丸暗記だけでも楽しめます。

でも、構造が分かると、
その楽しみはもう少し深くなります。

もし、コードを覚えることに追われて、
曲の流れが見えにくくなっているなら、
レッスンの中で、
インターバルやローマ数字を使って一緒に整理してみませんか。

コードをただ覚えるのではなく、
音と音の距離を感じながら、
曲の構造を一緒に聴いていけたらと思います。

Music Space サヴァサヴァ
  野口 尚宏

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