同じレッスンを受けているのに
長く教えていると、
ある事実に気づきます。
同じ時間、
同じ内容を伝えても、
変化のスピードは
人それぞれです。
ぐんぐん変わっていく方もいれば、
なかなか手応えが
つかめない方もいる。
もし今、
伸び悩みを感じているとしたら、
まず最初にお伝えしたいことがあります。
その差は、
理解力でも、才能でも、
やる気の量でもありません。
「受け取り方」という、
あとから身につけられる技術の
違いです。
差がつくのは、レッスンが終わったあと
まず、大前提を確認します。
レッスンの時間は、
音楽が身につく場所ではありません。
受け取る場所です。
実際に身につくのは、
そのあとの日々の中です。
ということは、
レッスンの価値は、
その場でどれだけわかったかではなく、
どれだけ持ち帰れたかで
決まります。
教室を出た瞬間に
内容が消えてしまえば、
どんなに良い時間でも
次につながりません。
持ち帰る力。
これが、教わる力の中心です。
「わかりました」が、いちばんの落とし穴
レッスン中、
いちばんよく交わされる言葉が
あります。
「わかりました」
この言葉は、
実はとても危ういものです。
その場で説明を聞くと、
たいてい理解できます。
目の前でお手本を聴けば、
違いもわかります。
でも、それは
「その場でわかった」だけかもしれません。
家に帰って一人になった瞬間、
何をどうすればいいのか
思い出せなくなる。
だから、おすすめしたいのは、
「わかりました」の代わりに
自分の言葉で言い直してみることです。
「つまり、ここをこうする、
ということですか」
言い直してみると、
わかっていたつもりの部分が
すぐに見えてきます。
質問は、上手にしなくていい
「質問してください」と言われても、
困ってしまう方は多いと思います。
そもそも、
何がわからないのかが
わからないからです。
でも、それでいいのです。
質問は、整った形である
必要はありません。
「なんだかここが気持ち悪いです」
「うまく言えないけど、
ここで詰まります」
それで、十分すぎるほどです。
教える側にとって、
「どこが気持ち悪いか」は
最高の手がかりです。
立派な質問をしようとして
黙ってしまうより、
もやもやをそのまま
差し出すほうが、
ずっと早く進みます。
指摘は、あなたへの評価ではありません
もう一つ、
受け取り方の話をします。
真面目な方ほど、
指摘を受けると落ち込みます。
「またできなかった」
「向いていないのかもしれない」
その気持ちは、
音楽に真剣な証拠です。
ただ、覚えておいてほしいのは、
指摘は音についての言葉であって、
あなたという人への
評価ではないということです。
「ここの音が硬いですね」は、
「あなたはだめですね」
ではありません。
音と自分を切り離せると、
指摘は攻撃ではなく
情報になります。
そして情報として受け取れる人は、
落ち込む時間の分だけ
先に進めます。
全部覚えようとすると、何も残らない
そして、いちばん実践的なことを
お伝えします。
レッスンの内容を
全部持ち帰ろうとしないでください。
一回のレッスンでは、
いろいろな話が出ます。
全部を抱えて帰ろうとすると、
たいてい途中でこぼれて、
結局ひとつも
残りません。
だから、帰り道に
こう決めてください。
「今回は、これだけやろう」
一つに絞ると、
次のレッスンまでに
確実に何かが変わります。
変わったところから、
また次の一つが見えてきます。
十を聞いて一を変えるほうが、
十を聞いて何も変わらないより、
はるかに速いのです。
教わる力は、生涯使える力
ここまでの話は、
音楽だけのことではありません。
自分の言葉で言い直す。
わからなさを素直に出す。
指摘を情報として受け取る。
一つに絞って実行する。
これらはすべて、
仕事でも、人間関係でも
そのまま使える力です。
そして、生まれつきのものではなく、
練習で身につくものです。
音楽を習うことは、
この受け取る力を育てる
練習の場でもあります。
受け取りやすい形で、お渡しします
最後に、
公平なことを書いておきます。
受け取る力を求めるなら、
渡す側にも責任があります。
いくら熱心に伝えても、
持ち帰れない量と形で渡していたら、
それは伝えた側の問題です。
「今日はここだけでいいですよ」
そう絞ってくれる人がいれば、
受け取る力は
自然と育っていきます。
サヴァサヴァでは、
その日に伝えることを絞り、
持ち帰れる形にして
お渡しすることを大切にしています。
伸び悩みを感じている方こそ、
ここから受け取り直して
みませんか。
Music Space サヴァサヴァ
野口 尚宏

