なぜ、みんな同じ曲を演奏するのか
ジャズに触れ始めると、
不思議に思うことがあります。
どのお店に行っても、
誰のライブを聴きに行っても、
同じような曲が
演奏されているのです。
「枯葉」「サマータイム」
「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」
何十年も前の曲を、
今でもみんなが演奏している。
オリジナル曲を作ればいいのに、
と思われるかもしれません。
これには、はっきりした理由があります。
スタンダードは、共通言語です
ジャズスタンダードは、
ただの名曲集ではありません。
演奏者同士の、共通言語です。
言葉に置き換えると
わかりやすいと思います。
私たちが日本語を使うのは、
日本語が特別に優れているから
ではありません。
相手に通じるからです。
スタンダードも同じです。
その曲を知っている人同士なら、
説明なしで
音楽を始められる。
だからこそ、
世界中で歌い継がれてきたのです。
初対面でも、音楽が始められる
ジャズのセッションでは、
驚くようなことが起こります。
その日に初めて会った人同士が、
打ち合わせもほとんどなく、
一緒に演奏を始めるのです。
曲名とキーを伝えるだけ。
それで音楽が動き出します。
これは、共通言語があるから
できることです。
メロディの形。
コードの進み方。
だいたいどのあたりで
ソロが回ってくるか。
その了解を共有しているから、
言葉を交わさなくても
一緒に進んでいけます。
スタンダードを覚えることは、
誰かと出会う準備をすることでも
あるのです。
英語もまた、その一部です
スタンダードの多くは、
英語の歌詞を持っています。
これも、共通言語の一部です。
歌詞の意味がわかると、
その曲がどんな場面を
描いているのかが見えてきます。
そして、それがわかっている人同士は、
演奏の温度感を
自然に合わせられます。
言葉と、メロディと、和音。
これらをまとめて共有できるから、
ジャズは国を越えて
成立してきました。
ただし、コピーで終わってはもったいない
ここからが、大切なところです。
共通言語を覚えることと、
誰かのコピーになることは、
まったく別のことです。
私たちは日本語を覚えましたが、
覚えたあと、
他人と同じ話をしているでしょうか。
していないはずです。
同じ言葉を使いながら、
自分の考えを話しています。
音楽も、まったく同じです。
スタンダードを覚えるのは、
誰かと同じ演奏をするためではなく、
自分の音楽が
相手に通じるようにするためです。
真似は入り口であって、
目的地ではありません。
上手さだけを追いかけても、意味は生まれない
もう一つ、お伝えしたいことがあります。
自分の上手さだけを
追いかけていても、
音楽は意味を持ちません。
速く弾けるようになった。
難しい曲が弾けるようになった。
それ自体は素晴らしいことですが、
そこで完結してしまうと、
音楽は自分の中に
閉じたままです。
音楽が意味を持つのは、
共演者に自分の意図が伝わったとき。
そして、聴いてくれる人に
自分の思いが届いたときです。
技術は、そのための手段です。
手段を磨くことに夢中になって、
何のためだったかを
見失わないようにしたいものです。
同じ曲だからこそ、あなたが見える
そして、ここに
スタンダードの一番の面白さがあります。
みんなが同じ曲を演奏するからこそ、
その人らしさが
はっきり見えるのです。
もし全員が違う曲を弾いていたら、
それは曲の違いなのか、
その人の違いなのか、
わかりません。
でも、同じ曲なら。
同じメロディ、同じコードなのに、
この人はこう歌う。
あの人はこう間を取る。
違いだけが、くっきりと残ります。
共通言語は、
個性を消すものではありません。
むしろ、個性が
いちばんよく見える場所なのです。
その言語を、一緒に身につけませんか
とはいえ、
共通言語を一人で覚えるのは
難しいものです。
言葉がそうであるように、
実際に誰かと交わしてみないと、
通じているのかどうかが
わからないからです。
「今の言い方、伝わりましたよ」
「そこは、あなたらしい言い回しですね」
そう返してくれる相手がいて初めて、
言語は身についていきます。
サヴァサヴァでは、
スタンダードを教材として学ぶだけでなく、
それを使って
あなた自身の音楽を話せるところまで
一緒に進んでいきます。
あなたの音楽を、
誰かに通じる言葉にしていきませんか。
Music Space サヴァサヴァ
野口 尚宏

