自分の好きな曲より「スタンダード」を。音楽の本当の力は、他者との「共通項」を見つけること。

温かみのある水彩画風のイラスト。スタジオで演奏するボーカリストとピアニスト、ドラマー。彼らの演奏から生まれた光の帯が空中で融合し、その中に世界中の様々な文化のシンボルやランドマーク(エッフェル塔、ビッグベンなど)が淡く浮かび上がっている。スタンダード曲が他者との共通項を見つけ、繋がるための共通言語であることを表現している。画像下部には「共通言語としての、スタンダード。」というテキストが書かれている。

「大人になってからピアノを始めたのは、あの憧れの曲を弾きたかったから」
「ボーカルレッスンを受けようと思ったのは、あの好きな洋楽を歌いたかったから」

音楽を愛する大人の方から、よくそんな言葉を伺います。
それはとても純粋で、素晴らしい原動力です。
しかし、少し立ち止まって考えてみてほしいのです。
あなたが「好き」だと思っているその曲は他の人にとっても「好き」なのでしょうか?

自分が好きな曲を演奏することは、
あなた自身にとっては楽しいことかもしれません。
しかし、音楽の本当の力は、単なる自己表現や自己満足の中にはありません。

例えば、あなたが誰かに「私の好きな曲、聴いて!」
と熱心に演奏したとします。
その曲が相手にとって全く聴いたこともない、
興味のないジャンルの曲だったとしたら、
相手はどう感じるでしょうか?

「上手だね」と表面的な感想はくれるかもしれません。
しかし、心から感動し、あなたの音楽と繋がることは難しいでしょう。
なぜなら、そこには相手とあなたとの間に
「共通項(共通の思い出や感情)」がないからです。

音楽は、自分一人の心の中で完結するものではありません。
音を奏でたその先に、誰かがいて、その人の心と自分の心が響き合う。
その「対話」こそが、音楽の本当の喜びなのです。

では、なぜ私たちが、あなたが聴いたこともないかもしれない、
世界中で何十年もの月日、演奏され続けている「スタンダード曲」を学ぶ必要があるのでしょうか?

それは、スタンダード曲が、自己表現のためのツールではなく、
自分以外の人との「共通項(共通言語)」を見つけるための強力なツールだからです。

「Fly Me to the Moon」や「The Girl from Ipanema」といった曲。
これらの曲は、あなたが知らなくても、
世界中のあらゆる世代の音楽家、
そしてリスナーが共有している「共通の宝物」です。
あなたがこの曲を演奏したとき、
その場にいる全員が「あ、この曲知ってる!」「この曲、昔父が聴いていたな」と、
瞬時にあなたの音楽と繋がることができます。

上手い下手は関係ありません。
元々そこにある、みんなが愛する美しい素材(パズルのピース)を、
あなたが心から楽しんで響かせること。
それだけで、あなたは自分以外の人と
言葉を超えた深いレベルでわかり合うことができるのです。

完璧主義を手放し、
まずは、スタンダード曲という「共通言語」を使って、
仲間や読者(リスナー)との間に、
信頼関係という美しい土台を作りませんか。

「この人と音を合わせると、すごく心地よいな」
「この人の奏でるスタンダード、いつ聴いても温かいな」

そうして、あなたという音楽家に対する信頼(共通項)が見つかってから、
最後に「実は、私が個人的にすごく好きな曲があって、
皆さんと共有したいんです」と、
自分の好きな曲を披露すれば良いのです。

その時、あなたの好きな曲は、
ただの「自己満足の曲」ではなく、
信頼する仲間と分かち合う「あなたからの特別な贈り物」へと姿を変え、
これまで以上に深く、相手の心に響くはずです。

Music Space サヴァサヴァでは、
この「共通言語」を見つけ、響き合う喜びを大切にしています。
スタジオで一緒に、世界中と繋がる「共通言語」を奏でてみませんか?

野口 尚宏