歌は「音符」で覚えるものではない
歌を覚えるとき、
あなたはどうやって覚えていますか?
音の高さを追いかける。
メロディの形を頭に入れる。
音符を見て音を確認する。
多くの方が、
こういう「音」中心の覚え方をしています。
でも実は、
この覚え方をしている限り、
歌は不自然になりやすいのです。
そして、何より
歌が心に深く残りません。
歌は本来、「言葉」が先にあるもの
少し冷静に考えてみてください。
あなたが今までに本当に好きになった歌、
心に深く残っている歌を
思い浮かべてみてください。
その歌のメロディだけを
思い出していますか?
おそらく違うはずです。
歌詞の一節、
その言葉が放っていた響き、
歌っている人の感情。
そういったものが、
メロディと一体になって
記憶に残っているのではないでしょうか。
歌は本来、
言葉と音楽が分かちがたく
結びついているものです。
音符だけで覚えると、歌は不自然になる
音符や音の高さだけを追って歌を覚えると、
どうしても演奏が不自然になります。
すべての音節を均等に発音してしまう。
意味を込めるべき言葉に
力が入らない。
息継ぎの場所が、
言葉の意味と合っていない。
これは、歌が
「音の連なり」になってしまっている状態です。
聴いている人は、
言葉では説明できなくても、
「なんとなく心に響かない」
と感じてしまいます。
音は合っているのに、
歌が刺さらない。
その原因は、
覚え方の入り口にあるのです。
言葉の意味とリズムで、歌を覚えてみる
歌を覚えるとき、
順番を逆にしてみてください。
まず、歌詞を読み込む。
どんな物語が描かれているのか。
どんな感情が込められているのか。
どこで気持ちが動いているのか。
歌詞を「理解する」のです。
そして次に、
その歌詞を「話すように」
声に出してみてください。
言葉のリズム、
強い言葉と弱い言葉、
息継ぎの自然な場所。
これらが体に入ってから、
初めてメロディに乗せていく。
この順番で覚えると、
歌はまったく違うものになります。
英語の歌は、この覚え方の最高の教材
「言葉で歌を覚える」感覚を
身につけたいなら、
英語の歌に挑戦するのが
もっとも近道です。
なぜなら、英語は
強い音節と弱い音節の差が
はっきりした言語だからです。
「Thank you」と発音するとき、
「THANK」が強くて長く、
「you」は軽く流れる。
この強弱がそのまま、
洋楽のグルーヴを生んでいます。
英語の歌を歌おうとすると、
音符をなぞる覚え方では
絶対に歌えません。
言葉のリズムを
体に入れる以外に、
英語の歌を歌う方法はないのです。
つまり英語の歌は、
「言葉で歌を覚える」感覚を
強制的に体に染み込ませてくれる、
最高のトレーニングになります。
そしてこの感覚が一度身につくと、
日本語の歌を歌うときにも
必ず生きてきます。
「言葉のリズムで歌う」という
歌の本質が、
体の中に出来上がっているからです。
「話すように歌う」が、歌の本質
名歌手と呼ばれる人たちに
共通している特徴があります。
それは、
「話すように歌う」ことです。
声を張り上げて歌うのではなく、
誰かに語りかけるように歌う。
歌詞を「歌う」のではなく、
「届ける」。
そのとき、
言葉は単なる音符の上の文字ではなく、
聴く人の心に直接
届くメッセージになります。
これは、
音符をなぞるだけでは
絶対にたどり着けない領域です。
言葉で覚えた歌は、心と頭に深く残る
言葉の意味とリズムで覚えた歌には、
もうひとつ大きな利点があります。
それは、
記憶への定着が圧倒的に深いということです。
音符だけで覚えた歌は、
しばらく歌わないと
すぐに忘れてしまいます。
でも、
言葉の意味とリズムで覚えた歌は、
何年経っても自然に出てきます。
これは、
記憶のされ方が違うからです。
音符は「情報」として記憶されますが、
言葉と感情は
「物語」として記憶されます。
物語として刻まれた歌は、
あなたの一部になります。
そう簡単には消えません。
歌をじっくり「味わう」ということ
言葉の意味とリズムで歌を覚えると、
もうひとつ素晴らしいことが起こります。
歌をじっくり味わえるようになるのです。
「ここの歌詞は、こういう情景なんだ」
「この一節に、作者の本音が込められているんだ」
「この言葉のリズムが、メロディの躍動感を生んでいるんだ」
そんなふうに、
一曲を何重にも味わえるようになります。
歌うたびに新しい発見がある。
同じ曲が、
歌うたびに違う色を見せてくれる。
これが、
音楽を一生楽しめる人の
覚え方です。
「話すように歌う」が、独学で身につけにくい理由
とはいえ、
「話すように歌う」感覚は
独学で身につけるのが難しいものです。
自分の歌が
「話しているように聴こえているか」
「言葉のリズムが乗っているか」を、
客観的に判断するのは
とても難しいからです。
「ここはもう少し語りかけるように」
「この言葉に意味を込めて」と
具体的に伝えてくれる人がいるかどうか。
それで、
歌の質はまったく変わってきます。
サヴァサヴァには、
あなたの歌を丁寧に聴いて、
言葉とメロディの関係を一緒に紐解いていく時間があります。
ジャズスタンダードなど英語の歌を通じて、
「言葉で歌を覚える」感覚を
体に染み込ませていくこともできます。
「歌を心に刻みたい」
「歌をもっと味わって歌いたい」
そう感じている方は、
ぜひ一度スタジオへお話に来てみてください。
言葉から始まる歌の世界を、
一緒に歩んでいきましょう。
野口 尚宏

