トランペットは「歌」である。習わずに到達した、呼吸とイメージの力

トランペットを吹く男性の背後に、熱唱する女性のシルエットが重なり、楽器から出る音が歌声のような燃えるエネルギーとなって渦を巻いている様子:楽器は歌うように吹く

「トランペットを教えていますが、実は一度も習ったことがありません」
そう言うと驚かれますが、私にとってこれは自然なことでした。
ライブで演奏出来るほど、上手くはありませんが、
スタンダードのメロディくらいなら、吹けます。
あとはもっと練習すればもっと上手くなると思います。

なぜなら、管楽器は指で操作する機械ではなく、
「呼吸の延長にある拡声器」だからです。
アンブシュア(口の形)を安定させるのには少し時間がかかりましたが、
音を鳴らす根本的なエンジンは、ボーカルで培った技術そのものでした。

楽器を鳴らすのは「唇」ではなく「呼吸」

多くの初心者が、口先だけで音を出そうとして苦戦します。
しかし、歌を歌う時のように、体の深いところから支えられた、
太くスピードのある息を流し込めば、楽器は勝手に鳴り始めます。

「高い声を出そう」とする時の体の使い方は、
そのまま「高い音を吹こう」とする時の支えになります。
楽器が変わっても、「体を共鳴させる」という本質は何も変わらないのです。

マイルスが教えてくれたこと

もう一つ、独学の私を支えたのは「耳」でした。
マイルス・デイビスをはじめとする巨匠たちの音を、
聴き込んだことでした。

「こういう音が出したい」という強烈で鮮明なイメージ(ゴール)が頭の中に鳴っていれば、
体は自然とその音を再現しようと調整を始めます。
逆に、どんなに教室に通っても、頭の中に「理想の音」が鳴っていなければ、
いつまで経っても魅力的な音は出せません。

楽譜の読み方や運指も大切ですが、
それ以上に「歌うように息を吸い、憧れの音を頭で鳴らすこと」
この2つさえあれば、楽器はあなたの体の一部となって、
自由に歌い出してくれるはずです。

野口 尚宏