リズム感覚は「歩き方」から始まる
音楽のリズムは特別な才能や訓練だけで育つものではありません。
むしろ、もっと日常的なところ──
歩くテンポや重心の置き方、呼吸の流れ に大きく宿っています。
私たちは一日に何千歩も歩いています。
この “歩くという行為” そのものが、
すでに一つのリズムになっているのです。
歩き方には、その人の“音楽性”が表れる
① 重心の位置がリズムの安定感をつくる
リズムが不安定な人は、
歩くときも体重移動が急だったり、
前のめりになりすぎていることがあります。
反対に、
静かに重心が移動する歩き方 は、
そのまま安定したビート感につながります。
② 歩幅とテンポは、その人の“自然なBPM”
人には誰にでも、生まれつきのテンポ感があります。
ゆっくり歩く人、速く歩く人。
その自然なテンポは、
ボーカルやピアノのリズムにもそのまま影響します。
自分に合わない速さで演奏しようとすると、
リズムが乱れたり、力んでしまうことがあります。
③ 呼吸の流れが音楽の“間”をつくる
歩くときの呼吸は、
音楽の「フレーズの長さ」や「間の取り方」に深く関わっています。
深い呼吸の人は、
ゆったりした長いフレーズが自然に出てきます。
浅い呼吸の人は、短く区切る歌い方になりやすいものです。
ジャズのリズムは「身体の自然さ」から生まれる
ジャズは複雑に見えるかもしれませんが、
その根っこにあるのは 人間の自然な身体の動き です。
- 歩くリズム
- 呼吸の流れ
- 心臓の鼓動
- 重心移動のスピード
これらが全て、
ジャズの「揺れ」や「裏拍の感覚」と深くつながっています。
レッスンで大切にしていること
Music Space サヴァサヴァでは、
まず最初に “身体のリズム” を整えるところから始めます。
① 歩くテンポを感じる
歩幅とテンポが安定すると、
演奏のリズムも自然に安定します。
② 重心の動きを意識する
リズムが揺れやすい方は、
身体の動きが急に切り替わる傾向があります。
ゆっくり重心移動をする練習で、驚くほど音が変わります。
③ 呼吸でフレーズを作る
歌もピアノも、
呼吸の流れがそのまま音の流れになります。
リズム感は“習うもの”ではなく“思い出すもの”
リズム感がない人はいません。
ただ、自分の自然なリズムを忘れているだけです。
歩き方を整えることは、
音楽の中心にある “自分だけの自然なビート” を思い出す作業なのだと思います。
音楽は頭だけで作るものではなく、
身体の中に流れているものです。
そのリズムに気づけたとき、
ジャズもポップスも、
もっと自由に、もっと心地よく表現できるようになります。
野口 尚宏

