「同じことの繰り返し」でいい。アドリブを劇的に変える、勇気ある引き算

たった3つの音符の単純な繰り返しが、やがて大きな音楽の波へと成長していく様子:シンプルな繰り返しこそがアドリブの秘訣

「アドリブ=次から次へと新しいフレーズを湧き出させること」
そう思い込んで、
難しいスケールや複雑な理論で頭をいっぱいにしていませんか?

もしあなたが「アドリブが何だかまとまらない」「弾いていて苦しい」
と感じているなら、
その原因は「弾きすぎ」にあるかもしれません。


アドリブ上達の最大の秘訣は、真逆のことにあります。
それは、「極めてシンプルなフレーズを、勇気を持って繰り返すこと」です。

1. 言葉の覚え方と同じ

赤ちゃんが言葉を覚える時を想像してください。
「ママ、ママ、ママ…」と、単純な音を何度も繰り返しますよね?
そうやってその言葉を自分の身体に染み込ませていきます。

ジャズのアドリブも同じです。「ド・レ・ミ」たった3音でもいい。
それを何度も繰り返して弾くことで、
そのフレーズが頭ではなく「身体の言葉」になります。
身体に入っていない難しいフレーズは、本番では絶対に出てきません。

2. 聴き手への「案内板」になる

ずっと違うことばかり話す人の話は、
聞いていて疲れますよね。
音楽も同じです。

シンプルなフレーズを繰り返すことは、
聴き手に対して「この曲の今のテーマはこれですよ」と
案内板(アンカー)を置いてあげるようなものです。
聴き手は、繰り返されるフレーズに安心感を覚え、
そのフレーズが次にどう変化するのかを期待して待つことができます。

3回繰り返して、4回目に少し変える

偉大なジャズミュージシャンの演奏を聴いてみてください。
彼らは驚くほどシンプルな「核となるフレーズ(モチーフ)」を執拗に繰り返します。

このドラマは、最初の「単純な繰り返し」がなければ成立しません。

「同じことを繰り返すなんて、手抜きじゃないか?」
「下手だと思われるんじゃないか?」
最初はそんな不安がよぎるかもしれません。

でも、勇気を出して「引き算」をしてみてください。
たった一つのシンプルなフレーズを大切にすること。
それが、あなたのアドリブを「独り言」から
「伝わる音楽」へと変える最短ルートなのです。

野口 尚宏