楽譜がないと、不安になっていませんか
楽譜がないと、落ち着かない。
楽譜を閉じると、何を弾いていいかわからなくなる。
楽譜がその場にないだけで、
不安になってしまう。
そんな感覚を持っている方は、
少なくないと思います。
楽譜は、心強い味方です。
そこに音楽が書いてある。
迷ったら、それを見ればいい。
でも、その安心感が
いつのまにか
「楽譜がないと音楽ができない」という
不安に変わってしまうことがあります。
今日は、その不安を
少しほどくお話をさせてください。
楽譜が本当に必要なのは、どんなときか
まず、はっきりさせておきたいことがあります。
楽譜は、確かに必要な場面があります。
大人数で緻密に音を合わせるとき。
複雑なアレンジを正確に再現するとき。
細部まで作り込まれた作品を
そのまま演奏するとき。
そういう場面では、
楽譜は欠かせません。
これは、
会社での正式なプレゼンや、
難しい試験に似ています。
正確さが求められ、
間違いが許されない場面では、
きちんとした準備と資料が必要です。
でも、考えてみてください。
あなたが音楽をしたい理由は、
試験に合格するためでしょうか。
それとも、音楽を楽しむためでしょうか。
音楽を「楽しむ」なら、必要なのは別の力
音楽を楽しむことが目的なら、
求められるのは
正確に楽譜を再現する力ではありません。
必要なのは、
音で会話できる臨機応変さと、
コミュニケーション能力です。
友達との楽しいおしゃべりを
思い浮かべてみてください。
そこに台本はありません。
原稿を読み上げる人もいません。
相手の言葉を聴いて、
その場で言葉を返す。
笑ったり、驚いたり、
話が思わぬ方向に転がったり。
その予測できないやりとりこそが、
会話の楽しさです。
音楽を楽しむということも、
本来これと同じです。
楽譜という台本を握りしめていると、
この「その場で音を交わす楽しさ」に
たどり着けません。
一音イメージできると、次の音が自然に浮かぶ
ここで、音楽の面白い性質を
お話しします。
頭の中で一つの音をイメージして、
それを歌ったり弾いたりすると、
不思議なことが起きます。
その次の音が、
自然と浮かんでくるのです。
これは、言葉と同じです。
「おはよう」と言えば、
次に「ございます」が
自然と続きます。
いちいち考えなくても、
言葉が言葉を呼びます。
音楽も、同じように連鎖します。
一つの音を出すと、
その音が次の音を呼ぶ。
その次の音が、また次を呼ぶ。
この連鎖の中に身を委ねると、
音楽は自然と前へ進んでいきます。
楽譜を見ていると、この連鎖が起きにくい
ところが、
楽譜を目で追っているとき、
この連鎖は起きにくくなります。
なぜなら、意識が
「次に来る音は何か」を
楽譜に探しにいってしまうからです。
次の音は、自分の内側から
湧いてくるものなのに、
楽譜という外側に
答えを求めてしまう。
すると、音楽が
「自分から生まれるもの」ではなく、
「楽譜をなぞるもの」になってしまいます。
音を頭でイメージし、
そのイメージのまま音を出す。
すると次の音が自然に浮かぶ。
この内側から生まれる連鎖こそが、
音楽を楽しむということの核心です。
まずは、短いフレーズを楽譜なしで
難しいことから始める必要はありません。
好きな曲の、
ほんの短いフレーズでいいので、
楽譜を見ずに、
頭の中で鳴らしてみてください。
その音を、そのまま口ずさむ。
あるいは、楽器で探してみる。
一音見つかったら、
「その次はどんな音だったかな」と
頭の中で鳴らしてみる。
最初は、時間がかかります。
でも、その「探す」時間の中で、
音と音のつながりが
体に入っていきます。
そして、その体験を重ねるほど、
楽譜がなくても
音楽ができる自信が育っていきます。
楽譜がなくても、音楽はできる
もう一度、お伝えします。
楽譜がなくても、音楽はできます。
楽譜は、緻密で高度な音楽を
正確に合わせたいときの、
大切な道具です。
でも、音楽を楽しむことが目的なら、
必要なのは楽譜ではなく、
音で会話する力です。
頭で音をイメージし、
その音を出し、
次の音を自然に呼び込んでいく。
その力は、誰の中にも眠っています。
とはいえ、
楽譜から離れる最初の一歩は、
一人だと不安なものです。
「その音で合っていますよ」
「次はどんな音が聴こえますか」
そう寄り添ってくれる人がいれば、
楽譜のない音楽の世界へ、
安心して踏み出せます。
サヴァサヴァでは、
楽譜に頼らず、
音で会話する楽しさを
一緒に育てていくレッスンを
大切にしています。
楽譜がないと不安、という方こそ、
ぜひ一度スタジオへ来てみてください。
音楽を、心から楽しむ感覚を、
取り戻していきましょう。
Music Space サヴァサヴァ
野口 尚宏

