音楽が生む“誰も責めない時間”の尊さ

平和な音楽の空気を抽象的に描いた水彩アート

音楽をしている時、私たちは不思議と 誰かを責める気持ち を忘れます。
自分を責めることさえも、少し緩むように感じます。

日常では、言葉や出来事に心が反応し、
知らぬ間に誰かに対してモヤモヤしたり、
自分を責めてしまうことがあります。

しかし、楽器を弾いている時、
歌を口ずさんでいる時、
その気持ちはふっと静かになります。

音楽をしている時、心は“争わない状態”になる。
それは、とても大切なことだと思うのです。


音楽には不思議なルールがあります。

音は「間違い」を責めない

  • 黙って流れていく
  • 次の音へと導いてくれる
  • 一歩ずつ先へ連れて行ってくれる

音は裁かず、ただ響いて消えていく。

この優しさに触れている時間が、
心の緊張をほぐしてくれます。

ジャズの即興では特に、
“間違えても止まらないほうが美しい” と言われます。

止まらないことは、
自分を許しながら前へ進むこと。

音楽は、そんな姿勢をそっと教えてくれます。


音楽の中にある平和さは、
ただ優しいだけではなく、
ゆっくりと 誠実さ を育ててくれます。

音楽と向き合うと、自分の内側も静まる

  • 呼吸が整う
  • 思考が整理される
  • 余計な不安が離れていく
  • 今の自分に誠実になる

この“静かな誠実さ”は、
日常の人間関係にも自然に滲んでいきます。

誰かを急かさず、
誰かを裁かず、
音を聴くように相手の言葉を聴く。

音楽が育ててくれるのは、
そんなあたたかい姿勢です。


セッションやアンサンブルでは、
互いの音を聴き合いながら進んでいきます。

そこには「責める」余地がない

  • 予想と違うフレーズも “出てきた音” として大切にする
  • 相手のリズムに寄り添う
  • 自分のスペースを譲ったり、受け取ったりする

この姿勢が、人との関係にもつながります。

音楽をすることは、
優しく生きる練習でもある のです。


難しいテクニックは必要ありません。
深く考える必要もありません。

ピアノの和音をひとつ鳴らすだけで、
声を小さく出すだけで、
心の中にある “争わない場所” が静かに広がります。

これが「誰も責めない時間」の力

  • 今の自分を否定しない
  • 過去の自分も責めない
  • 誰かを思い出して怒りの方向へ行かない

音の中には、
“そのままでいいよ”
というメッセージが最初から入っている
ように思います。

だから、音楽は私たちを平和にしてくれるのです。


音楽をしている時、
私たちは誰も責めません。
自分も、他人も。

その短い時間でさえ、
心は驚くほど軽くなります。

誰にも強制されない時間、
誰とも争わない時間、
誰かを許し、自分も許す時間。

その平和さを、どうか大切にしてほしいと思います。

音を鳴らすことで戻ってくる静けさが、
あなたの一日をやわらかく包みますように。

野口 尚宏