レッスンは、ただ教わるだけの場所なのでしょうか
音楽のレッスンというと、
先生が教え、
生徒さんがそれを覚える場所だと思われることがあります。
もちろん、基礎を学ぶことは大切です。
コードの仕組み。
リズムの感じ方。
発声の方向。
伴奏やアドリブの考え方。
そうした知識や技術を、
一つずつ整理していく時間は必要です。
ただ、音楽は、
教わったことを覚えるだけで完成するものではありません。
実際に音を出してみる。
誰かの音を聴いてみる。
自分の音で返してみる。
そのように音楽の中に参加して初めて、
分かってくることがあります。
レッスンは、
ただ教わる場所から、
音楽に参加する場所へ変わっていけるのだと思います。
知識は、音の中で経験してこそ生きてくる
知識は、音楽を深くするための大切な地図です。
けれど、地図を眺めているだけでは、
実際に歩いたことにはなりません。
コードを知っていても、
その響きの中で音を選んだ経験がなければ、
演奏の中では使いにくいものです。
リズムの説明ができても、
人と合わせたときに身体が流れに入れなければ、
音楽は少し硬くなります。
発声の理屈を知っていても、
伴奏の響きの中で声を出してみなければ、
本当に必要な調整は見えにくいものです。
知識は、
音の中で経験してこそ、
自分の音楽を支える力になっていきます。
参加すると、自分の課題が見えてくる
一人で練習していると、
ある程度できているように感じることがあります。
でも、誰かと合わせてみると、
急に分からなくなることがあります。
今が何拍目なのか。
どこで入ればよいのか。
伴奏をどう聴けばよいのか。
自分の音が大きすぎるのか、小さすぎるのか。
そうしたことは、
実際に音楽の中に入ってみないと見えにくいものです。
けれど、それは失敗ではありません。
むしろ、そこに本当の課題があります。
教わった課題ではなく、
自分の音の中から見えてきた課題。
それに気づいたとき、
練習は少し主体的なものへ変わっていきます。
ボーカルも、伴奏の中に参加している
ボーカルは、
伴奏に合わせて歌うだけの存在ではありません。
どの言葉を大切にするのか。
どこで息を吸うのか。
どの母音を長く響かせるのか。
どの一音を少し遅らせるのか。
それによって、
ピアノやギターの伴奏は変わります。
伴奏者が歌を聴き、
歌が伴奏を聴く。
そのやり取りの中で、
歌はただのメロディではなく、
アンサンブルの中心として働き始めます。
生の伴奏の中で歌うと、
声の出し方も、
言葉の届け方も、
呼吸の使い方も変わっていきます。
そこに、ボーカルが音楽へ参加する面白さがあります。
ジャズピアノは、支えることで参加する
ジャズピアノでは、
ソロやアドリブに目が向きやすいかもしれません。
でも、まず大切になるのは、
音楽を支える力です。
歌を支える。
メロディ楽器を支える。
ベースやドラムと一緒に、曲の流れを作る。
そのためには、
自分の音だけでなく、
相手の音を聴く必要があります。
今、どの音域を空けるのか。
どのタイミングでコードを置くのか。
音を増やすのか、減らすのか。
そうした判断をしながら弾くとき、
ピアノは音楽に参加しています。
支えることは、
後ろに下がることではありません。
音楽全体を聴きながら、
必要な場所に自分の音を置くことです。
セッションは、参加する学びを育てる
セッションは、
上手な人だけが演奏を見せる場所ではありません。
音楽に参加する感覚を育てる場所です。
テーマを共有する。
コード進行を共有する。
リズムの流れを共有する。
そのうえで、
一人ひとりが自分の役割を見つけていきます。
前に出るときがあります。
支えるときがあります。
待つときがあります。
何も弾かずに聴くことが、
一番音楽的なこともあります。
相手の音を聴き、
場の流れを感じ、
その中で自分が何をするのかを選ぶ。
その経験が、
音楽に参加する力を育ててくれます。
教えることは、参加できるように導くこと
講師の役割は、
ただ知識を渡すことだけではないと思っています。
必要な知識や技術を伝えながら、
生徒さん自身が音楽の中に入っていけるように導くこと。
今、何が聴こえているのか。
どこで迷ったのか。
なぜその音を選んだのか。
どこを聴けば戻ってこられるのか。
そうしたことを一緒に確かめながら、
生徒さん自身が聴き、考え、選び、
音で返していけるようになる。
そこに、音楽を学ぶ本当の面白さがあるのではないでしょうか。
教わる音楽から、参加する音楽へ
音楽を学ぶ入口では、
教わることが必要です。
知らないことを知る。
できなかったことを、少しずつできるようにする。
その時間は大切です。
けれど、その先には、
自分で音楽に参加する喜びがあります。
聴く。
選ぶ。
出す。
待つ。
支える。
返す。
その一つひとつが、
音楽を自分のものにしていきます。
サヴァサヴァでは、
レッスンを、ただ教わる時間で終わらせたくありません。
生徒さん自身が、
音楽の中に入り、
自分の音を聴き、
誰かの音に反応しながら、
少しずつ参加できるようになること。
その歩みを大切にしています。
もし、音楽をただ習うだけではなく、
実際に音の中で感じ、
人と響き合いながら育ててみたいなら、
レッスンやセッションの中で、
その入口を一緒に探してみませんか。
教わる音楽から、参加する音楽へ。
その変化を、
一緒に少しずつ育てていけたらと思います。
Music Space サヴァサヴァ
野口 尚宏

