沈黙を聴く力|音を詰め込む演奏から呼吸する演奏へ

午後の柔らかな光が差し込む静かな部屋で、男性がピアノの鍵盤から手を離し、消えていく余韻に耳を澄ませる水彩アニメ風イラスト。まばらな黄金の波紋が広い余白の中に静かに広がり、下部中央に「静けさの中に、音楽がある。」の白いテキスト。

音を出すことに、必死になっていませんか

演奏していると、
いつのまにか
音を出すことに必死になっています。

次の音、その次の音。
間が空くと不安になって、
何かで埋めようとする。

気づけば、
演奏がぎっしりと
詰まっている。

技術はあるはずなのに、
どこか窮屈で、
息が詰まるような演奏になっている。

そんな感覚があるなら、
今日は少し違う話をさせてください。

音を減らす話ではありません。
「静けさを聴く」という話です。

静けさは、「無」ではない

多くの人は、
静けさを「音がない状態」だと
思っています。

音楽が鳴っていない時間。
空白。
何もない場所。

だから、埋めたくなる。

でも、本当にそうでしょうか。

試しに、演奏をやめて、
そのまま黙って
座っていてみてください。

そこには、
驚くほど多くの音があります。

部屋の空気の動き。
遠くの車の音。
自分の呼吸。
ピアノの弦に残る、かすかな余韻。

静けさとは、
音がない状態ではありません。
今まで聴こえていなかった音が、
聴こえてくる状態です。

音を出している間、耳は塞がっている

ここに、大切なことがあります。

自分が音を出している間、
耳は自分の音でいっぱいになっています。

その状態では、
周りの音は聴こえません。
空間の響きも感じられません。
共演者の呼吸も、
拾えなくなります。

音を詰め込めば詰め込むほど、
あなたの耳は
自分の音に塞がれていきます。

逆に、
音を出すのをやめた瞬間、
耳がひらきます。

その一瞬に、
今まで聴こえていなかったものが
一気に入ってくる。

静けさを聴くとは、
耳をひらくということなのです。

余韻の中に、音楽が生きている

ピアノで一音を鳴らして、
そのまま手を止めてみてください。

音は、すぐに消えません。

弦が震え、
響板が鳴り、
部屋の空気が揺れ、
だんだんと消えていく。

その消えていく時間の中にこそ、
音楽のもっとも美しい部分が
あります。

でも、次の音を急いで出してしまうと、
その余韻は
聴かれることなく消えます。

自分が出した音の余韻を、
最後まで聴いてあげる。

それだけで、
演奏はまったく変わります。

静けさを聴ける人の演奏は、呼吸している

静けさを聴けるようになると、
演奏に呼吸が生まれます。

音を出す。
その響きを聴く。
空間が落ち着くのを待つ。
そして、次の音を置く。

このリズムで演奏している人の音楽は、
聴いていて
とても心地よいものです。

なぜなら、
聴く人にも呼吸する余裕が
与えられているからです。

音が詰まった演奏は、
聴く人も息が詰まります。

静けさのある演奏は、
聴く人を招き入れます。

静けさを怖がらない

音を詰め込んでしまう人の多くは、
実は静けさを
怖がっています。

間が空くと、
「間違えた」と思われる気がする。
「弾けていない」と思われる気がする。

だから、埋める。

でも、聴いている人は
そんなふうには思いません。

むしろ、
堂々と置かれた静けさには、
大きな説得力があります。

「この人は、
この静けさを選んで置いている」

そう伝わったとき、
静けさは
音以上に雄弁になります。

日常の中でも、静けさを聴いてみる

これは、音楽だけの話ではありません。

私たちの毎日は、
音と情報で埋め尽くされています。

移動中もイヤホン。
家に帰ればテレビ。
手元にはスマートフォン。

静けさが訪れる隙間が、
ほとんどありません。

一日に数分でいいので、
何も鳴らさずに
座ってみてください。

その静けさの中で、
耳がひらいていく感覚を
味わってみてください。

その感覚は、
そのまま演奏にも生きてきます。

静けさを聴く耳を、一緒に育てませんか

演奏が窮屈だと感じている方。
音を詰め込んでしまう癖に
気づいている方。

必要なのは、
もっと速く弾く技術でも、
もっと難しいフレーズでもありません。

静けさを聴く耳です。

ただ、一人で演奏していると、
この静けさは
どうしても怖いものです。
「ここは待っていいんですよ」
「その余韻は、もっと聴いていいんですよ」
と言ってくれる人がいるだけで、
静けさは味方に変わります。

サヴァサヴァでは、
音を足すことよりも、
音と音の間に流れる時間を
聴くことを大切にしています。

あなたの演奏に、
呼吸を取り戻していきませんか。

Music Space サヴァサヴァ
   野口 尚宏

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