楽譜に書かれていないことを想像します

木の温もりのある部屋でアップライトピアノに向かい、譜面台に開かれた楽譜をじっと見つめている男性の水彩アニメ風イラスト。手は鍵盤に置かれているがまだ弾いておらず、下部中央に「書かれていないほうを、読む」の白いテキスト。

以前このコラムで、
楽譜が読めなくても
始められると書きました。
(以前のコラムはこちら )

ただ、それは
楽譜が要らないという意味では
ありません。
楽譜に沿って弾くことも、
同じように大切です。

楽譜には、音の高さと長さしか書かれていません

五線の上に並んでいるのは、
どの音を、
どれくらいの長さで鳴らすか、
それだけです。

強弱の記号や
速度の指示はありますが、
それも大まかなものです。
その音をどんな気持ちで出すのかは、
どこにも書かれていません。

楽譜は、
音楽そのものではありません。
音楽を思い出すための
手がかりのようなものです。

同じ楽譜から、違う音楽が生まれます

同じ曲を
何人かの演奏で聴き比べてみると、
まったく別の曲のように
聴こえることがあります。

音の高さも長さも
同じはずなのに、
受ける印象が変わる。
これは、
楽譜に書かれていない部分を
それぞれが埋めているからです。

埋め方は
人によって違います。
そして、
そこにその人が出ます。

この音は、何を言おうとしているのか

譜面を前にしたときに、
私がよくお聞きするのは、
この部分をどう感じますか、
ということです。

ここで音が高いところへ
上がっていくのはなぜか。
ここで急に音が少なくなるのは
どうしてなのか。
作った人が
何を思っていたのか。

正解はありません。
ご自身がどう受け取ったかが、
そのまま演奏になります。

何も感じないまま弾くと、
音は並びますが、
そこで止まってしまいます。

感じたものを、どうやって届けるか

感じるところまでは、
一人でもできます。
難しいのはその先です。

頭の中にある感じ方を、
実際の音にして
相手に届けるところ。
ここに技術が要ります。

ここを少し弱く弾く。
ここで一瞬待つ。
ここは音を減らす。
そういった一つひとつが、
感じたものを運ぶ手段になります。

技術は、
速く弾くためのものではありません。
伝えたいものがあって、
それを届けるために使うものです。

読めるようになると、想像する材料が増えます

楽譜が読めるようになると、
できることが一つ増えます。
作った人が残したものを、
直接受け取れるようになります。

耳で覚えるだけでは
気づかなかったことが、
譜面を見ると見えてくる。
そういうことがあります。

ですので、
読めるようになることは、
枠にはめられることでは
ありません。
想像するための材料が
増えるということです。

楽譜を正確に弾けるかどうかより、
そこから何を受け取ったかのほうを、
レッスンではよくお聞きします。
この部分が好きです、
という一言から
始まることも多いです。

好きな曲を一曲、
持ってきていただければ
それで十分です。
一緒に譜面を見ながら、
どう感じるかを
聞かせてください。

Music Space サヴァサヴァ
   野口 尚宏

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