アドリブの音選び|大事なのは高さではない

暖かな光の部屋で、女性が一本の指で一つの鍵盤だけを押す水彩アニメ風イラスト。同じ音から短い点、長い帯、淡い光、力強い光と異なる形の黄金の音が広がり、その間に静けさの余白がある。下部中央に「同じ一音でも、まるで違う。」の白いテキスト。

「どの音を弾けばいいのか」で、手が止まる

アドリブの番が回ってくる。

その瞬間、頭の中が
質問でいっぱいになります。

今はどのコードだったか。
この音は使っていいのか。
外れたらどうしよう。

考えているうちに小節が過ぎ、
結局ほとんど
音を出せないまま終わる。

この状態から抜け出すために、
今日はひとつ
思い切ったことを言います。

どの音を弾くかは、
あなたが思っているほど
重要ではありません。

どんな音でも、最終的には合います

結論から書きます。

どんな音でも、
最終的には合わせられます。

音そのものに、
正解も不正解もありません。

ある音が外れて聴こえるのは、
その音が悪いからではなく、
扱われ方のせいです。

強く、長く、
目立つ場所に置かれれば、
その音は主張になります。

そっと、短く、
流れの途中に置かれれば、
同じ音でも
通り過ぎるだけです。

音の高さが決めているのは、
実は音楽のごく一部なのです。

本当に決めているのは、四つのこと

では、何が決めているのか。

大きく分けて、四つです。

どのタイミングで出すか。
どんな強さで出すか。
どれくらいの長さで保つか。
そして、どこで休むか。

音の高さは、
この四つと並ぶ
五番目の要素にすぎません。

それなのに、私たちは
高さのことばかり考えて、
残りの四つを
ほとんど意識していません。

固まってしまう原因は、
ここにあります。

一つの音だけで、やってみる

そこで、
試してほしいことがあります。

使う音を、一つに決めてください。

どの音でも構いません。

そして、その一音だけで
アドリブをしてみます。

変えていいのは、
タイミングと、強さと、
長さと、休みだけです。

短く跳ねさせてみる。
思い切りためて、遅れて入る。
ぐっと伸ばしてみる。
しばらく黙ってみる。

やってみると、
驚かれると思います。

たった一音でも、
ちゃんと音楽になるのです。

そして何より、
選ぶ必要がないので
固まりません。

いちばん効くのは、休みです

四つの中で、
もっとも効果が大きいのは
休みです。

これは、いちばん
使われていない要素でもあります。

アドリブというと、
音を出し続けなければ
いけない気がします。

でも実際は、逆です。

休みがあるから、
次に出した音が際立ちます。

休みがあるから、
聴いている人が
今の音を味わえます。

そして、休んでいる間に、
あなた自身も
次を考える余裕ができます。

音を減らすことは、
手抜きではありません。
いちばん強い表現の
ひとつです。

コードトーンは、足場として使う

ここで、誤解のないように
書いておきます。

コードの構成音を意識することは、
とても有効です。

そこに音を置けば、
安定して聴こえます。

ただ、それは
「そこしか踏んではいけない」
という意味ではありません。

足場として使えばいいのです。

足場があるとわかっていれば、
安心して
その外にも踏み出せます。

そして、外に出た音も、
扱い方しだいで
ちゃんと音楽になります。

固まるのは、選択肢が多すぎるから

最後に、心の面の話をします。

固まってしまうのは、
知識が足りないからではありません。

選択肢が多すぎるからです。

その場で最善の音を
選ぼうとすると、
人は必ず動けなくなります。

だから、減らすのです。

使う音を一つに絞る。
あるいは、三つだけにする。

制限があるほうが、
人は自由に動けます。

アドリブが上手な人は、
たくさんの音を
知っている人ではなく、
少ない音を
豊かに扱える人です。

その扱い方を、一緒に探しませんか

とはいえ、
一人で試していると、
不安になると思います。

一音だけで弾いていて、
これでいいのだろうか。
ただ手を抜いているだけでは
ないだろうか。

「今の間、すごくよかったですよ」
「その一音、効いていました」
そう返してもらえると、
減らすことへの怖さが
消えていきます。

サヴァサヴァでは、
たくさん弾けるようになることより、
一音をどう扱うかを
大切にしています。

まずは一音から、
アドリブを始めてみませんか。

Music Space サヴァサヴァ
   野口 尚宏

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