「ボイシング」という言葉に隠された秘密
ジャズピアノや音楽理論を学んでいると、
「ボイシング(和音の押さえ方)」や「ボイスリーディング(音の導き方)」、
あるいは「4声(よんせい)のハーモニー」といった専門用語によく出会います。
これらの言葉に共通して含まれているもの、
お気づきでしょうか?
そうです。
すべて「ボイス(Voice=声)」という言葉が入っています。
なぜ、ピアノやギターといった楽器の和音の話をしているのに
「声」という言葉が使われるのでしょうか。
それは、世界に存在するすべての楽器のハーモニーの原点が、
私たち人間の「歌(コーラス)」だからです。
楽器は、人間の「声」の代わりだった
はるか昔、まだピアノもシンセサイザーもなかった時代、
教会に響き渡る美しいハーモニーは、
すべて人間の肉声による「合唱」で作られていました。
高い声の人、低い声の人。それぞれが重なり合って一つの和音を作り出し、
次の和音へと移り変わっていく。
やがて、その人間の声の役割を「楽器」が代わりに担当するようになり、
現代の複雑なオーケストラやバンドアンサンブルへと発展していきました。
つまり、あなたがピアノで「ポーン」と4つの音を同時に鳴らしたとき。
それは単に「4つの鍵盤を押した」のではなく、
あなたの指先で
「4人の合唱隊(ソプラノ、アルト、テノール、バス)が同時に歌っている」ということなのです。
スムーズな音の移動=「歌いやすい」ということ
コード進行を弾くとき、
ただ丸暗記した形をガチャン、ガチャンと並べるのではなく、
一つひとつの音が隣の音へどう滑らかに移動していくかを考えることを
「ボイスリーディング」と呼びます。
なぜ、ボイスリーディングがスムーズ(滑らか)だと、
音楽は美しく心地よく聴こえるのでしょうか?
その答えはとてもシンプルです。
「音の移動が少なく、人間にとって歌いやすいから」です。
もし合唱隊で、
いきなりドの音から高いシの音へ飛んで歌えと言われたら、
喉が苦しくて歌いづらいですよね。
でも、ドからすぐ隣のレへ移動するなら、
とても自然に、リラックスして歌えます。
一つ一つの音(声)が、無理なく一番近い音へ移動していくこと。
この「歌いやすさ」の連続こそが、結果として最も美しく、
濁りのない極上のハーモニーを生み出すのです。
サヴァサヴァで、指先から「歌」を響かせよう
岸和田のMusic Space サヴァサヴァでは、
ピアノや楽器を「指の運動」としてではなく、
「歌うことの延長」として捉えるレッスンを大切にしています。
ただコードの形を覚えるのではなく、
「この音は、次にどこへ行きたがっているだろう?」と、
一つひとつの音の「声」に耳を傾けてみませんか。
「あ、この音を残したまま、こっちの音だけを半音下げれば、
すごく滑らかに次のコードに行ける!」
そんな風に、鍵盤の上であなただけの合唱隊を
美しく導く(ボイスリーディングする)ことができたとき。
あなたの奏でる楽器は、これまでとは全く違う、
体温を持った「生きた歌声」となって空間に響き渡るはずです。
野口 尚宏

