完璧を求めるほど、音楽は動かなくなる
多くの人が
「間違えないように」
「正確に弾けるように」
と思いながら練習をします。
けれど、完璧を追いかけるほど
音は硬くなり、身体は緊張し、
“音楽そのもの”が動かなくなります。
音楽は本来、呼吸と同じように
流れて、ゆらいで、時に揺れながら育つものです。
間違いを恐れると、正しい音しか探せなくなる
① 音を探す心の余裕がなくなる
「ミスしたらどうしよう」と考えると、
指も声も縮こまってしまい、
音を“選ぶ自由”が奪われます。
自由がない音は、どれだけ正確でも
聴き手には緊張として伝わってしまいます。
② 音楽は正解の積み重ねではできない
正しい音を並べるだけならAIが完璧にこなします。
人間の音楽が心に響くのは、
迷ったり、揺れたり、試したりしている“過程”が音に滲むから。
間違いは、音楽の一部なのです。
本当に上達する人は“失敗を材料にできる人”
① 失敗した瞬間こそ、音楽が動いている
失敗は
「今、挑戦している」という証拠です。
完璧に弾こうと守りに入ったときより、
失敗した瞬間の方が、
音楽はずっと前に進んでいます。
② 失敗の数だけ、音を選ぶセンスが育つ
人は、うまくいかなかった経験から
“次はこうしよう”
という選択肢を自然に増やしていきます。
その積み重ねが
“自分の音”を作っていきます。
③ 失敗しない人より、失敗できる人が伸びる
間違いを避け続ける人は、
狭い範囲でしか弾けません。
失敗しながら進む人は、
どんどん表現の幅が広がります。
これは音楽に限らず、
全ての芸術で共通していることです。
ジャズは“間違いを音楽に変える”文化
ジャズの即興演奏では、
ミスを恐れていると全く音が出せません。
むしろ、
- 思い切って踏み出す
- ミスを次の音に変える
- その場で音楽を組み立て直す
という柔軟な心が求められます。
ジャズは、
“間違いを排除する音楽”ではなく、
“間違いを味にする音楽”です。
完璧ではなく、誠実に音と向き合うこと
音楽において大切なのは、
正しい演奏ではなく、
誠実な姿勢で音と向き合うことです。
息を吸って、
その瞬間の自分で音を出す。
その音がたとえ揺れていても、
それがあなたの“今の音”です。
完璧ではない音の方が、
聴く人の心には届くことを
私たちは知っています。
失敗が成長につながる
間違えることを恐れるより、
間違えても前に進める心を育てていきましょう。
失敗は、音楽の終わりではありません。
失敗は、あなたが音楽を信じて踏み出した証です。
その一歩が、
いつかあなた自身の音を育てていきます。
野口 尚宏

