練習は最初の五分で決まる|質を上げる始め方

朝の光が差し込む部屋で、女性が練習の最初に鍵盤を一音だけ押し、その響きに目を閉じて耳を澄ます水彩アニメ風イラスト。一つの黄金の波紋が広がり、やがて部屋いっぱいの音の波へと育っていく。下部中央に「最初の五分が、その日を決める。」の白いテキスト。

同じ一時間なのに、中身が違う

今日は一時間練習した。
昨日も一時間練習した。

それなのに、
手応えがまるで違う日があります。

集中できて、あっという間だった日。
ずっとぼんやりしたまま
時間だけが過ぎた日。

この差はどこから生まれるのか。

体調や気分のせいだと
思われるかもしれません。

でも、多くの場合、
分かれ目はもっと手前にあります。

練習を、どう始めたか。
最初の五分です。

最初の五分が、その日の方向を決める

練習を始めた直後、
私たちは無意識に
その日のモードを決めています。

何となく弾き始めた日は、
そのまま何となく
終わっていきます。

逆に、最初の五分で
耳と意識がきちんと立ち上がると、
その状態が
残りの時間ずっと続きます。

最初にどこを向いたかで、
その後の道が決まる。

だから五分は、
準備運動ではありません。

その日の練習全体への、
投資です。

よくある、もったいない始め方

いちばん多いのは、
いきなり曲の頭から
弾き始めることです。

気持ちはよくわかります。
早く音楽に触れたいですから。

でも、これをやると、
だいたい同じことが起きます。

いつものところで詰まり、
いつものように戻り、
いつもの弾き方をなぞって終わる。

昨日の自分を
再生しているだけの時間です。

もう一つは、
指ならしを漫然と続けること。

スケールを何となく弾きながら、
頭の中では別のことを考えている。

指は動いていますが、
耳は眠ったままです。

まず、耳を起こす

おすすめしたい最初の一手は、
とても簡単です。

音を、一つだけ鳴らしてみてください。

そして、その音が消えるまで
最後まで聴きます。

それだけです。

たったこれだけで、
「音を出す人」から
「音を聴く人」へ
立場が切り替わります。

歌の方なら、
ため息のような息を
一度ゆっくり吐いてみる。

その息の音を聴くところから
始めてみてください。

耳が起きていない状態で
どれだけ回数を重ねても、
その練習は
あまり身になりません。

次に、前回の続きを思い出す

二つ目にやってほしいのは、
前回の練習で
気づいたことを思い出すことです。

「ここの音が硬かった」
「あの箇所でいつも走る」
「先生にこう言われた」

三十秒で構いません。

この一手間があるかないかで、
練習が積み上がるものになるか、
毎回振り出しに戻るものになるかが
分かれます。

思い出せない日は、
それでも構いません。

「思い出そうとした」という事実が、
次回から記憶を
残しやすくしてくれます。

最後に、今日の一点を決める

三つ目は、
今日は何をやるのかを
一つだけ決めることです。

大切なのは、
一つだけ、というところです。

あれもこれもと欲張ると、
結局どれも
中途半端になります。

「今日は左手の音量だけ」
「今日はこの四小節だけ」

そう決めておくと、
練習中に迷わなくなります。

そして終わったときに、
できたかできなかったかが
はっきりします。

手応えが残る練習は、
この「はっきりする」から
生まれます。

時間がない日こそ、最初の五分

「五分も使ったら、
練習時間がなくなってしまう」

そう思われるかもしれません。

でも、実際は逆です。

時間が取れない日ほど、
始め方が効いてきます。

耳が起きていて、
やることが決まっている十五分は、
ぼんやりした一時間より
ずっと濃い時間になります。

忙しい毎日の中で
音楽を続けていくには、
長さを増やすより、
入り方を整えるほうが現実的です。

始め方が、音楽との距離を決める

もう一つ、大切なことがあります。

練習の始め方は、
その日の気持ちも決めます。

いきなり難しいところから始めて、
できなくて落ち込んで終わる。
これが続くと、
楽器の前に座ること自体が
億劫になります。

でも、一音を聴くところから
静かに始めた日は、
音楽と穏やかに
再会できます。

最初の五分は、
上達のためだけのものではありません。

音楽と長く付き合っていくための、
やさしい入り口でもあります。

あなたの五分を、一緒に整えませんか

とはいえ、
「今日の一点」を自分で決めるのは、
案外難しいものです。

今の自分に何が必要なのかは、
自分では見えにくいからです。

「次までは、ここだけでいいですよ」
そう一点に絞ってくれる人がいると、
家での練習は
驚くほど迷いがなくなります。

サヴァサヴァでは、
レッスンの時間だけでなく、
その間の練習が実るように、
持ち帰る一点を一緒に決めています。

あなたの練習の入り口を、
ここから整えていきませんか。

Music Space サヴァサヴァ
   野口 尚宏

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