「正しい音より、伝わる音を」―クラシック教育が忘れてきた“即興”の力

クラシック教育とジャズ教育の違いを考える

🎵 はじめに:「正しい音」が上達のゴールになっていませんか?

クラシック音楽の世界では、
今でも「譜面どおり」「正しい音」「先生の言うとおり」が重視されます。

確かにそれは、美しい完成度を生み出します。
しかし、その教育の中で――
“音で会話する力”や、“自分の感情で音を出す勇気”
育ちにくくなっているのも事実です。

ジャズの現場にいると、クラシック出身の先生方や生徒さんの方が
「どう表現すればいいか分からない」と戸惑う場面に、何度も出会います。


🎹 クラシック教育の「再現性」はすばらしい。でも“即興性”を奪うこともある

クラシック教育は「完璧な再現」を追求します。
しかし、その強さが「失敗を恐れる心」を育ててしまうこともあります。

どんなに楽譜を読み込んでも、
「自分の音を信じる力」がなければ、音楽は伝わらない。

「この通りに弾きなさい」と言われ続けてきた人は、
音を“選ぶ”という行為に不安を感じてしまうのです。


🎤 ジャズが教えてくれる、“考える音”と“生きた音”

ジャズのレッスンでは、
「どの音を出すか」よりも「なぜその音を出すのか」を考えます。

ピアノでも、ボーカルでも、ベースでも。
それぞれが“音の役割”を感じ取りながら会話していく。

そこには「失敗」も「正解」もありません。
あるのは、その瞬間の理解と反応だけ。

ジャズは、正しい答えを当てるゲームではなく、
目の前の音と対話する芸術です。


🌿 教える人も、学ぶ人も「即興的」であっていい

あるクラシックの先生が、こう漏らしていました。

「生徒さんが減っていくストレスがある。
でも、自分のやり方を変えるのが怖い。」

音楽教育の問題は、技術ではなく「人間関係の硬直」です。
教える先生も、生徒さんも「正しい型」に縛られすぎている。

サヴァサヴァのレッスンでは、
「うまく弾けなくても大丈夫」と伝えています。
なぜなら――

“音を出す勇気”こそ、音楽の最初の一歩だからです。


🕊️ 「考えて音を選ぶ」ことが、生き方を変える

音楽とは、本来“生き方の訓練”です。

すぐに結果を求める社会の中で、
焦らず、自分のペースで音を聴き、考え、掴む。
それは、音楽の枠を超えて、人生そのものを豊かにしてくれます。

正しい音を出すより、
「伝わる音」「自分らしい音」を探すこと。

それが、これからの音楽教育に必要な“即興の力”だと思います。


🎹「正しさ」より「誠実さ」で音を届けよう

クラシックもジャズも、どちらも素晴らしい。
ただし、「音楽の原点」を忘れないことが大切です。

音は、伝えるためにある。
音楽は、心と心が出会うためにある。

そして教える先生側も、教わる生徒さん側も、
その瞬間を共に創り出す即興の人間でありたい。

それが、Music Space サヴァサヴァが目指す
“音で考えるレッスン”の原点です。

野口 尚宏