「間違えても止まらない」勇気。完璧主義を手放して、ジャズという時間の旅を楽しもう。

温かみのある水彩画風のイラスト。スタジオでピアノとベースがセッションしている。ピアニストは少しミスをしてハッとした表情をしつつも、笑顔で演奏を止めず前に進んでいる。楽器から流れる光の川(音楽の流れ)の中で、ミスをした音符が少し軌道から外れつつも、美しい別の色に変化して再び光の川に合流していく様子が描かれ、「間違えても止まらない」ジャズの精神を表現している。画像下部には「間違えても、止まらない。」というテキストが書かれている。

ピアノやボーカルの練習をしていると、
弾き間違えたり、歌詞や音程を外したりした瞬間に、
ハッとして演奏を止め、「あ、もう一回やります!」と
最初からやり直してしまうことはありませんか?

一人で練習しているときは、それも良いかもしれません。
しかし、ジャズのセッションやバンドのアンサンブルなど
「誰かと音を合わせる」場面において、
実はこの「やり直し」は一番やってはいけないタブーなのです。

大人になってから音楽を学ぶ真面目な方ほど、
「完璧に弾かなきゃ」「間違えたら周りに迷惑がかかる」
というプレッシャーから、ミスをした自分を許せず、
時間を巻き戻そうとしてしまいます。
しかし、音楽における時間は、決して巻き戻ることはありません。

ジャズやアンサンブルは、自分一人で作るものではなく、
同じ空間にいるメンバー全員で「今、この瞬間」の時間を共有して楽しむ音楽です。

もしあなたがミスをして立ち止まり、
「今のところ、もう一回弾き直そう」
と心の中で1秒戻ってしまったら、
前を向いて進み続けているベースやドラムのメンバーとの間に
「1秒のズレ」が生じてしまいます。
メトロノームのように正確である必要はありませんが、
全員で共有している「音楽の流れ(タイム感)」を断ち切ってしまうことの方が、
一つの音を間違えることよりも、
アンサンブルにとっては致命的なのです。

ジャズの巨匠、マイルス・デイヴィスは
「ジャズに間違いはない。あるのは、次にどう弾くかだけだ」という言葉を残しています。

間違えた音を出してしまったとしても、
止まらずに次の音へ、さらに次の音へと進んでいけば、
その「間違えた音」は、少しスリリングでカッコいい「経過音(パッシングノート)」や、
新しいフレーズへの入り口に生まれ変わります。

最初から完璧な完成品を目指すのではなく、
「あ、今ちょっと変な音が鳴ったな。
じゃあ次はどうやって辻褄を合わせようか?」と
ハプニングすらも面白がりながら、
段々と音が形になっていくプロセスそのものを楽しむこと。
それこそが、ジャズという音楽の本当の醍醐味です。

岸和田のMusic Space サヴァサヴァのレッスンでは、
「間違えないこと」よりも
「どんなことがあっても、最後まで曲を止めずに走り切ること」
を高く評価します。

最初は勇気がいるかもしれません。
間違えたまま弾き続けるのは、
なんだか気持ち悪いと感じるかもしれません。
でも、思い切って「常に先を見る」ことに意識を向けてみてください。

「あ、間違えたけど、ベースの音がカバーしてくれた」
「止まらずに進んだら、なんとなく形になった!」
そんなアンサンブルの魔法を一度でも経験すれば、
あなたを縛っていた「完璧主義」の鎖は解け、
音楽はもっともっと自由で楽しいものになるはずです。
スタジオで、一緒に「止まらない時間の旅」を楽しみましょう。

野口 尚宏