「正しい声」を出そうとして、小さくなっていませんか
ボイストレーニングを続けていると、
だんだんこうなっていきます。
正しい姿勢で。
正しい呼吸で。
正しい発声で。
もちろん、これらは大切なことです。
サヴァサヴァでも、
毎回のレッスンの最初に
発声はしっかり行います。
でも、あるとき気づくのです。
「正しく歌えているはずなのに、
何かが伝わってこない」
「発声は綺麗になったのに、
歌が小さくまとまっている」
もしそんな感覚があるなら、
今日は少し思い切った提案を
させてください。
恥ずかしがらずに、いろんな声を出してみる
提案は、シンプルです。
恥ずかしがらずに、
いろんな声を出してみてください。
子どものような、
極端に幼い声。
おじいさんのような、
しわがれた声。
男性なら、女性のような声。
女性なら、男性のような声。
怒った声。
泣きそうな声。
笑いをこらえた声。
眠そうな声。
「そんなの、歌と関係ない」
と思われるかもしれません。
でも、これこそが
歌が上達する一番の近道なのです。
声の「引き出し」を増やす
なぜ、いろんな声を
出してみる必要があるのか。
それは、
声の「引き出し」を増やすためです。
歌を表現するとき、
使える声が一種類しかなければ、
表現も一種類にしかなりません。
どんな歌詞も、
どんな場面も、
同じ声で歌ってしまう。
それでは、
歌が語りかけてきません。
でも、声の引き出しがたくさんあれば、
その歌詞にふさわしい声を
その場で選べるようになります。
引き出しを増やすためには、
普段から極端な声を
出してみることです。
極端に振り切った経験があるから、
その真ん中も
自在に使えるようになります。
この歌詞を、どんな声で届けるか
歌を歌うとき、
こう問いかけてみてください。
「この歌詞を、
どんな声で届けたいだろう」
囁くように、そっと伝えるのか。
強く訴えかけるのか。
あえて淡々と、感情を抑えるのか。
この選択が、
歌の印象をまったく変えます。
同じ「愛している」という言葉でも、
囁く声と、
叫ぶ声と、
淡々と言う声では、
まったく違うものが伝わります。
どれが正解ということはありません。
大切なのは、
「自分は今、どう伝えたいのか」を
選んでいるかどうかです。
スケール感と距離感を、声で描く
もう一つ、意識してほしいことがあります。
それは、
スケール感と距離感です。
この歌詞は、
大勢に向かって歌っているのか。
それとも、
目の前のたった一人に
語りかけているのか。
この場面は、
広い空の下なのか。
それとも、
閉じた小さな部屋の中なのか。
その情景を、
自分のイマジネーションで
ありありと思い描く。
そして、
その情景にふさわしい声を出す。
すると、
聴いている人の中にも、
同じ情景が広がっていきます。
俳優のように、声で演じる
ここまでの話をまとめると、
歌うことは
俳優の仕事に似ています。
優れた俳優は、
役に応じて声を変えます。
同じ人物なのに、
怒っているとき、
悲しんでいるとき、
愛を伝えるときで、
まったく違う声を出す。
そして、その声によって、
観客は物語の中に
引き込まれていきます。
歌も、まったく同じです。
声を最大限に使って、
その歌の世界を演じる。
それができたとき、
歌は「音程を追う行為」から
「人の心を動かす表現」へと
変わります。
発声技術は、そのための準備運動
ここで、大切な整理をします。
発声技術やボイストレーニングは、
それ自体が目的ではありません。
声で表現する幅を広げるための
準備運動であり、
自分の声を自在にコントロールする
力をつけるためのものです。
正しい発声ができるようになるのは、
ゴールではなく、
スタートラインに立つことです。
そこから、
その声を使って何を表現するのか。
それが、歌の本当の勝負どころです。
だから、
正しい発声にこだわりすぎて
表現が小さくなってしまうのは、
とてももったいないことなのです。
恥ずかしさを手放せる場所で
「いろんな声を出してみましょう」
と言われても、
一人ではなかなかできません。
恥ずかしさが、
先に立ってしまうからです。
だからこそ、
「ここでは何をやっても大丈夫」
と思える場所が必要です。
変な声を出しても笑われない。
思い切り振り切っても
受け止めてもらえる。
そういう安心できる場所でこそ、
人は初めて
大胆になれます。
サヴァサヴァは、
あなたが恥ずかしさを手放して、
思い切り声を試せる場所です。
あなたの中に眠っている
まだ出したことのない声を、
一緒に見つけていきませんか。
Music Space サヴァサヴァ
野口 尚宏

