曲は「完成」させなくていい。たった一つの「モチーフ」が化ける魔法

ジャズセッションを楽しむ4人のミュージシャン。中央に浮かぶ光る音符の種から、魔法のようにカラフルな光のツタや五線譜が成長し広がっていく様子:モチーフから音楽が育つ楽しさ

「最後まで間違えずに弾ききること」が音楽のゴールだと思っていませんか?
もちろん、それも一つの楽しみ方ですが、
ジャズの世界には全く別の遊び方があります。

それは、「曲を完成させようとしない」という遊び方です。

たった3つの音から始まる冒険

ジャズのセッションで必要なのは、
壮大な楽譜ではなく、たった一つのシンプルな「モチーフ(動機)」です。
例えば、「ド・ミ・ソ」というたった3つの音でも構いません。
これを音楽の「種」とします。

Aさんがその種を蒔くと、
Bさんが「じゃあリズムを変えてみよう」と水をやり、
Cさんが「コードを変えて雰囲気を変えよう」と肥料を与える。
そうやって一つの単純なフレーズが、
メンバーのアイデアによって、
見る見るうちに予想もしなかった形へと展開(Develop)していきます。

その場のハプニングを楽しむ

これは、親しい友人との雑談に似ています。
「昨日の天気」という些細な話題(モチーフ)から始まって、
気づけば人生論や昔話に花が咲いているようなものです。

そこには台本もゴールもありません。
「どう展開するか分からない」というドキドキ感と、
仲間と一緒だからこそ辿り着けた「景色」を楽しむこと。
それこそが、ジャズという音楽が持つ最高の贅沢なのです。

完璧な演奏を目指して肩に力を入れる必要はありません。
ポケットに小さな「モチーフ」を一つ入れて、遊びに来てください。
あとは仲間が、それを素敵な音楽へと育ててくれますから。

野口 尚宏