その数字は、誰の心ですか?
「動画は最初の3秒が勝負」
現代のクリエイターはそう教えられます。
派手なイントロ、奇抜な演出、流行りのダンス…。
確かにそれで再生回数という「数字」は伸びるかもしれません。
しかし、その数字の向こう側に、
あなたの音楽を本当に愛してくれた人は何人いるでしょうか?
一瞬の刺激で集めた視線は、一瞬で去っていきます。
音楽の「密度」を高めるもの
「オレを見てくれ」よりも大切なこと
素晴らしい演奏には、
特有の「濃い空気(密度)」があります。
その正体は、技術の高さではありません。
「矢印の向き」です。
自己顕示欲だけの演奏は、矢印がすべて「自分」に向いています。
これでは音がスカスカになります。
密度のある演奏は、矢印が「共演者」や「聴き手」に向いています。
「今、ドラムがこう仕掛けてきたから、自分はこう支えよう」
「今日のお客さんは疲れているから、少し優しい音色で届けよう」
この「他者への想像力(心遣い)」が幾重にも重なった時、
音楽は初めて分厚い密度を持つのです。
インスタント食品にならないで
消費されるより、味わわれる音楽を
SNSでバズることは、
ある種の「ファストフード(手軽な食事)」を提供することに似ています。
たくさんの人に食べてもらえますが、すぐに忘れられてしまうかもしれません。
私たちが目指したいのは、
時間をかけてじっくり煮込んだスープのような音楽です。
派手さはなくても、一口飲めば身体の芯まで温まり、一生記憶に残る味。
数字に追われるのをやめて、目の前の一人と深く繋がることを選んだ時、
あなたの音は本当の意味で「響き」始めます。
音楽における本当の報酬とは?
スマートフォンの中にある「いいね」の数よりも、
ステージの上で目が合ったメンバーの笑顔や、
客席で涙を流してくれた一人の表情。
そのリアルな温度感こそが、私たちが音楽を続ける本当の報酬なのです。
野口 尚宏

