練習しているのに、スイングしない
ジャズを学び始めて、
ある壁にぶつかる人がいます。
音は間違えていない。
コードも合っている。
フレーズも覚えた。
それなのに、
どうしてもジャズに聴こえない。
あのふわりと跳ねる感じ、
前へ転がっていくような推進力が
生まれてこない。
スイングしない、という悩みです。
この悩みの答えは、
意外なほど地味なところにあります。
それは、カウントです。
スイングは、揺れる土台からは生まれない
スイング感というと、
感覚的なもの、
センスの問題だと思われがちです。
でも、実際は違います。
スイングとは、
拍のどこに音を置くかという、
ごくわずかなズレの積み重ねです。
少し後ろにためる。
ほんの少し前に食い込ませる。
その微差が、あの跳ねを生みます。
ということは、
基準となる拍が
自分の中で揺れていたら、
ズラしようがないのです。
どこがジャストなのかわからないまま、
なんとなくズラしても、
それはスイングではなく
ただの不安定になります。
スイングは、
揺るぎない土台の上でしか
生まれません。
その土台が、カウントです。
メトロノームを、2拍4拍に置いてみる
ここで、具体的な練習方法を
お伝えします。
メトロノームを、
いつもの半分のテンポに設定してください。
そして、その音を
1拍目ではなく、
2拍目と4拍目として聴きます。
つまり、
「1、カチ、3、カチ」
という感じです。
最初は、かなり戸惑うと思います。
どこが1拍目なのか、
見失いそうになります。
でも、その戸惑いこそが
この練習の核心です。
なぜ、2拍4拍なのか
理由は二つあります。
一つ目は、
2拍目と4拍目こそが、
ジャズのノリの中心だからです。
ドラムのハイハットが鳴る場所。
お客さんが自然と手を叩く場所。
音楽が跳ねる場所。
そこにメトロノームを置くことで、
体がジャズの重心を
覚えていきます。
二つ目は、もっと本質的です。
1拍目が鳴らないということは、
1拍目を自分で作らなければ
ならない、ということです。
いつものメトロノーム練習では、
私たちは機械に
連れて行ってもらっています。
でも2拍4拍にすると、
自分がテンポを
持たなければならなくなる。
従う側から、
刻む側へ。
この立場の逆転が、
リズムを体の内側に
移し替えてくれます。
声に出して、数える
そしてもう一つ、
大切なことがあります。
頭の中で数えるのではなく、
声に出して数えてください。
「ワン、ツー、スリー、フォー」
声に出すと、
そこに息が伴います。
息が伴うと、
リズムが体のものになります。
頭の中だけで数えていると、
リズムはいつまでも
考える対象のままです。
でも、声と息に乗せた瞬間に、
リズムは呼吸と同じ
身体の営みに変わります。
スイングは、頭ではなく
体から出てくるものです。
だからこそ、
声に出して数えることに
意味があるのです。
数えなくても数えている、という状態へ
この練習を続けていくと、
ある変化が訪れます。
最初は必死に数えていたものが、
だんだん
数えなくても感じられるようになる。
意識しなくても、
体の奥で拍が鳴り続けている。
そうなったとき、
初めて自由が手に入ります。
拍が体に染み込んでいるから、
安心して音をズラせる。
ためられる。突っ込める。
それが、スイングです。
カウントの練習は、
自由を奪う作業ではありません。
自由に遊べる土台を
作る作業なのです。
地味な練習が、一番効く
正直に言えば、
この練習は地味です。
新しいフレーズを覚える方が、
ずっと楽しいでしょう。
難しい曲に挑戦する方が、
達成感もあります。
でも、スイングしない原因は、
フレーズの数でも、
曲の難易度でもありません。
ほとんどの場合、
拍が体に入っていないことです。
一日五分でも構いません。
メトロノームを2拍4拍に置いて、
声に出して数えてみてください。
数週間後、
同じフレーズが
違って聴こえてくるはずです。
その手応えを、一緒に確かめませんか
ただ、この練習には
難しさもあります。
一人でやっていると、
自分の拍が本当に安定しているのか、
判断がつかないのです。
ずれていることに気づけないまま、
ずれた感覚を
練習してしまうこともあります。
「今、少し走っていますよ」
「そこ、いいスイングでした」
そう外から言ってくれる人がいるだけで、
この練習の効果は何倍にもなります。
サヴァサヴァでは、
スイング感を感覚まかせにせず、
体に落とし込むところから
一緒に取り組んでいます。
あなたの中に眠っているスイングを、
ここで目覚めさせてみませんか。
Music Space サヴァサヴァ
野口 尚宏

