これからの音楽教室に必要な視点。なぜ新しい音楽が生まれないのか。

地上と空の間に立つ人を描いたミニマルな抽象音楽イラスト

AIが音楽を“作れる”時代になりました。
しかしそれ以前に、人間が新しい音楽を生み出すことが
とても難しくなっているように感じます。

音楽教室、音大、音楽シーン──
どこを見ても、過去の焼き直しが多く、
「本当に新しい表現」が生まれにくくなっています。

その理由には、音の奥にある“心の構造”が関係しています。


再現する教育は得意だが、創造する教育は少ない

音大や多くの音楽教室では
正確に演奏すること が重視され、
間違えないことが評価の中心になります。

しかし、
新しい音楽は、失敗や試行錯誤の先に生まれるものです。

誤りを恐れる教育では
“探す音” が育つ前に萎縮してしまいます。


作曲・即興・表現は「教科」ではなく「特別扱い」

本来、音楽は

  • 自分の言葉で歌う
  • 感じたまま弾く
  • 心を音に変える
    という創造行為の集まりです。

しかし教育現場の多くは
再現中心で、感情表現や即興の時間がわずかです。

創造力が育つ前提条件が欠けている と言えます。


バズ・再生数・SNS映えが主役

現代の音楽シーンは
“短期間で消費される曲” が中心になり、
新しい表現よりも
「分かりやすさ」や「刺激」が優先されます。

時間をかけて深まっていくような音楽は
評価されにくい時代です。

その風潮が教育にも入り込み、
本当の意味での創造性が育ちにくくなっています。


自分の声・音・感情を知らないまま大人になる

音楽の本質は
“自分を見つける行為” です。

しかし、ほとんどの学習者は

  • 音程
  • リズム
  • 発声
  • 技術
    に意識が向き、自分の内面に耳を傾ける時間がありません。

“自分の音がどこにあるか” が分からないままでは、
当然、新しい表現にはたどり着けません。

これは大人の学び直しでも同じです。


創造は「間違える勇気」から育つ

新しい音楽が生まれるとき、
必ずその前には

  • 迷い
  • 小さな失敗
  • 思い通りにいかない時間
    があります。

しかし音楽教育は
“正しいか間違っているか” の価値観が強いため、
挑戦する心が育ちにくいのです。

あなたが日頃から大切にしている
“誠実に音を選ぶ姿勢”“間を聴く力” は、
実はこの問題の解決策そのものです。


音楽が本来持つ

  • 癒し
  • 自己探求
  • 感情の解放
  • 心の再生
    こうした役割は
    教育現場や音楽シーンでは軽視されがちです。

音楽が“課題”や“イベント”になってしまい、
生きることと音が結びつかない。

だから新しい音楽も生まれにくいのです。


新しい表現を育てるには、技術よりも
心に寄り添う場所・創造性を許す文化
が必要になります。

音楽は本来、
人生の揺れや静けさ、
心の深いところに触れる行為です。

その本質を思い出せる教室が、
AI時代にも“選ばれる教室”になっていきます。

  • 即興から学ぶ
  • 自分の声を探す
  • オリジナル曲を作る
  • 心と音のつながりを大切にする
    こうしたアプローチは、
    まさにこれから求められる新しい教育の形です。

音楽が「自分を取り戻すための場所」になること。
そこから、新しい表現が静かに始まっていきます。

野口 尚宏