「間違えた」音は、新しい物語の始まり。完璧を手放したとき、あなたの本当の音楽が鳴り響く。

温かい照明のジャズクラブにあるヴィンテージピアノとコーヒー。画像には「『間違えた』音は新しい物語の始まり」「まずは楽しく音に触れること。」「LEARN JAZZ PIANO」というテキストが添えられている。

大人になってから音楽を始めようとするとき、
ふと指先や声がこわばってしまう瞬間はありませんか。

「楽譜通りに弾かなければ」 「正しい音程で歌わなければ」

私たちは普段、社会の中で「正確であること」や
「間違えないこと」を求められながら生きています。
だからこそ、せっかくの自由な音楽の時間にも、そのルールを持ち込んでしまいがちです。

ピアノの鍵盤を一つミスタッチしてしまったとき。
あるいは、ボーカルの高音で声が少しひっくり返ってしまったとき。
つい「あっ、ごめんなさい」と謝ってしまう方を、
レッスンでよくお見かけします。

でも、本当に音楽に「謝るべき間違い」なんてあるのでしょうか。

少し、音楽から離れて人生の話をしてみましょう。

綿密に計画を立てた旅行よりも、
ふと乗る電車を間違えて降り立った見知らぬ駅で、
偶然見つけた小さな喫茶店のコーヒーの味が、
なぜか一生忘れられない思い出になることがあります。

人生において、私たちが「失敗した」「道を逸れた」と思う瞬間は、
実は「思いもしなかった新しい風景との出会い」であることが少なくありません。
決められたレールの上をただ正確に走るだけでは、決して出会えなかった景色です。

そして、ジャズや洋楽ボーカルの世界も、
これとまったく同じなのです。

ジャズの巨匠、マイルス・デイヴィスはかつてこう言いました。

「ジャズに間違った音などない。あるのは、次にどう弾くかという解決だけだ」

あなたが「間違えた!」と思ったその音は、決して失敗ではありません。
それは、楽譜という安全な地図から一歩外へ踏み出し、
あなただけの新しいメロディが生まれるための「種」なのです。

予想外の音を弾いてしまったら、その音を面白がり、次の音へと繋げてみる。
声が震えたり掠れたりしたら、それを「隠すべきミス」ではなく、
あなたの人間らしい「感情の揺らぎ(ブルース)」として歌に乗せてみる。

私たちが目指すのは、機械のように正確に音符を再現することではありません。
ミスタッチから生まれる緊張感や、予期せぬ声の掠れさえも愛し、
そこから相手とどう対話していくか。
その瞬間にしか生まれない「心と心のセッション」こそが、
ジャズやボーカルの本当の醍醐味なのです。

岸和田にあるMusic Space サヴァサヴァは、
あなたが「正解」を気にすることなく、
のびのびと自分自身を表現できる場所でありたいと願っています。

上手くできなくても、立ち止まってしまっても大丈夫です。
その不器用さや戸惑いさえも、
あなたという人間の魅力的な「音」の一部なのだから。
技術はあくまで、誰かの心にあなたの想いを届け、
深く繋がるための「架け橋」にすぎません。

どうか、完璧な演奏を手放す勇気を持ってください。
あなたが「間違えること」を恐れなくなったとき、
あなたの本当の音楽が、自由に、そして美しく鳴り響き始めます。

まずはたくさん「間違える」ことから始めてみませんか?
スタジオのドアを開けて、あなただけの音が聴けるのを、心から楽しみにしています。

野口 尚宏