迷子になったら、止まっていい。沈黙は「助けて」のサインだから

セッション中に演奏を止めて耳を澄ます奏者。周りのメンバーの楽器から、優しい光の道しるべ(助け舟)が差し伸べられている様子:音による助け合い

セッション中、ふと譜面や構成を見失い、
「今どこ!?」とパニックになる。
いわゆる「ロスト」です。
そんな時、多くの人がやってしまうのが、
「バレないように適当な音を弾き続ける」ことです。

でも、それはまるで地図を持っていないのに走り回るようなもの。
余計に迷子になり、アンサンブル全体を混乱させてしまいます。

沈黙は「聴く」ための準備

分からなくなったら、手を止めてください。
音を出さなくていいのです。
自分が静かになれば、周りの音が驚くほどクリアに聞こえてきます。

ベースのルート音、ドラムのフィルイン、誰かが弾くコードの響き。
それらの中に、あなたが知っている曲の「断片」が必ず見つかります。
「あ、今はBメロに入ったところだ」「サビの最後だ」と、
現在地を再確認できるはずです。

仲間が「ここだよ」と教えてくれる

あなたが手を止めると、
周りのプレイヤーは「お、迷ったかな?」と気づきます。
すると彼らは、分かりやすい音でルートを弾いたり、
メロディを強調したりして、「ここだよ」と音で合図を送ってくれます。

セッションは、間違えないかを監視し合う試験会場ではありません。
お互いの音を聴き合い、困った時は助け合う場所です。
あなたが手を止めて耳を傾けることは、
「仲間を信頼して、助けを求める」という、
とても美しいコミュニケーションなのです。

ロストすることは恥ずかしいことではありません。
一番怖いのは、独りよがりになることです。
迷子になったら、立ち止まって耳を澄ます。
そうすれば、優しい仲間の音が、必ずあなたを連れ戻してくれます。

野口 尚宏