「何も知らない」は、最高の才能。これから知るすべてが「感動」になる

真っ白な地図を手に、これから広がる色鮮やかな音楽の世界をワクワクした表情で見つめる人:初心者の可能性

「音楽のことは何も知りません。
こんな状態で始めてもいいのでしょうか?」
体験レッスンで、申し訳なさそうにそう仰る方がいらっしゃいます。

私はいつもこう答えます。
「それは素晴らしいことですね!
あなたは今、一番おいしい部分をこれから味わえるのですから」

ベテランが失ってしまったもの

長く音楽をやっていると、どうしても知識や手癖が邪魔をして、
純粋な驚きを感じにくくなる瞬間があります。
「ああ、これはツーファイブ進行ね」「ここで転調したな」と、
頭で解析してしまうからです。

しかし、何も知らないあなたは違います。
初めて美しい和音(ハーモニー)を指で押さえた瞬間の、
「わぁっ」と心が震える感覚。
音が重なる不思議さ、リズムが体に同期する快感。

それらすべてを、フィルターを通さず、
新鮮なままダイレクトに受け取ることができます。
その「初体験の連続」こそが、音楽を学ぶ上で最も贅沢な時間なのです。

変なクセがない、最強の状態

また、指導する立場から見ても、
実は「真っ白な状態」の方ほど上達が早いことがよくあります。
自己流の変なクセや、間違った知識の思い込みがないため、
スポンジが水を吸うように、正しい基礎が素直に入っていくからです。

「知らない」ということは、邪魔なものが何もないということ。
あなたは今、「最高のスタートライン」に立っています。

知識がないことを恐れないでください。
それは「無知」ではなく、「無限の楽しみの予感」です。

今日から一つずつ、あなたの真っ白な地図に、
音という彩りを加えていきましょう。

野口 尚宏