「一息」で、物語になる。ワンセンテンスを歌いきる、ブレスの魔法

ヴォーカリストが途切れることのない一本の美しい光のアーチ(息のコントロール)を描き出している様子:ワンセンテンスを歌いきる大切さ

「音は合っているのに、なぜか幼稚に聞こえる」
「感情が乗っていないように感じる」

その原因の多くは、
音楽が「単語の羅列(箇条書き)」になってしまっていることにあります。
私たちは普段、話す時に「私は/今日/ご飯を/」と細切れに息継ぎはしません。
「私は今日、ご飯を食べました」と、
一息で文章(センテンス)を繋げます。
音楽もまったく同じです。

最初から最後まで、責任を持つ

「このフレーズ(一文)は、ここまでが一息だ」と決めて歌う(弾く)こと。
そう意識するだけで、音には自然と「アーチ(弧)」が生まれます。

  • 出だし: 物語の始まりとして丁寧に。
  • 中間: 頂点に向かってエネルギーを膨らませる。
  • 語尾: 息を使い切るように、大切に収める。

この一連の流れを「一息」でコントロールすることで、
音楽に滑らかな抑揚と、ドラマチックな推進力が生まれるのです。

楽器奏者も「呼吸」をする

「ピアノやギターは息を使わないから関係ない」と思っていませんか?
いいえ、名手ほど、心の中で深く呼吸をしています。

心の中で「ワンセンテンス=一息」と決めて歌いながら指を動かすと、
不思議なことに指先のタッチも滑らかになり(レガート)、
音が途切れなくなります。
逆に、息のコントロールを忘れると、
音はすぐに物理的な「打撃音」に戻ってしまいます。

一文、ワンセンテンス、一息。
その中に、あなたの感情のすべてを詰め込んでみてください。

途中で投げ出さず、最後の一滴まで息をコントロールしきった時、
あなたの演奏は「音」から「歌」へと変わります。

野口 尚宏