裏声は「高いところ」にあるのではない
「裏声を出してください」と言うと、多くの人は反射的に高い声を出そうとします。
しかし、ここに大きな誤解があります。
実は、裏声は高い音域のためだけのテクニックではありません。
むしろ、話し声くらいの「中音域」で、リラックスした裏声を出すことこそが、
自由な歌声を手に入れるための最短ルートなのです。
「白」と「赤」を混ぜて、「ピンク」を作る
声の境界線を消す作業
地声を「赤」、裏声を「白」の絵の具だと想像してみてください。
多くの人は、この2色がパッキリと分かれてしまっています。
「ここまでは地声(赤)、ここからは裏声(白)」というように、
急にスイッチが切り替わるため、
声がひっくり返ったり、音色が痩せたりしてしまうのです。
グラデーションを作る
ここで重要になるのが、「中音域での裏声」です。
低い音域まで裏声を下ろしてくる練習をすることで、
地声の領域に少しずつ裏声の成分(脱力と響き)を混ぜていくことができます。
すると、赤と白が混ざり合い、
美しい「ピンク(ミックスボイス)」のグラデーションが生まれます。
この「混ぜる感覚」を掴むことで、力強いのに苦しくない、
柔らかいのに芯がある、そんな多彩な声色を自由に操れるようになるのです。
全ては「裏声」という土台の上に
まずは力みを取ることから
地声ベースで高音を目指すと、
どうしても喉が締まり、行き詰まります。
逆に、リラックスした裏声をベース(土台)にし、
そこに少しずつ地声の強さを足していくアプローチなら、
喉を痛めることなく音域を広げることができます。
「裏声=弱い声」ではありません。
それは、あなたの声を多彩にするための、
最も重要な「ベースとなる素材」なのです。
優しい裏声が歌声を変える
まずは、低い音、中くらいの音で、
優しい裏声を出して遊んでみてください。
そのリラックスした感覚が、やがて地声と溶け合い、
あなただけの新しい「楽器」を作り上げます。
野口 尚宏

