なぜ、最初の練習曲は「F」がいいのか?
ジャズスタンダードを覚える時、
私はまず「Fのキー(ヘ長調)」で弾いてみることを強くおすすめしています。
それは前回お話しした通り、コード進行の法則が見えやすいからだけではありません。
実はピアノという楽器において、
「Fのキー」こそが、最も美しく、
最も簡単にアレンジが決まる「魔法のキー」だからです。
ピアノにとっての「黄金の音域」
伴奏とメロディが喧嘩しない
ピアノでアレンジをする際、
一番の悩みは「左手の伴奏が濁ること」
「右手と左手がぶつかること」です。
しかし、Fのキーはこの問題を自然と解決してくれます。
- 左手(ベース・コード): Fのルート音やコード(F, Gm, C7など)は、
鍵盤の中央より少し低いエリアで弾くと、低音が濁らず、かつスカスカにもならない
「ふくよかな響き」になります。 - 右手(メロディ): Fのキーでメロディを弾くと、ちょうどピアノの
「一番おいしい高音域(中高音)」に自然と収まります。
つまり、無理な転回形を考えなくても、左手と右手を自然な位置に置くだけで、
プロのようなバランスの良いサウンド(ヴォイシング)が完成するのです。
これが「C(ハ長調)」だと低すぎて濁ったり、「G(ト長調)」だと高すぎて軽くなったりしがちです。
「F」が持つ、特別な響き(調性)
人の心を開く「温かさ」
音楽には、キーごとに特有の性格(調性)があります。
Fのキー(ヘ長調)は、
昔から「平和」「田園」「温かさ」を象徴する調だと言われています。
シャープで緊張感のあるキーとは違い、
Fには聴く人の肩の力をふっと抜かせるような、
おおらかで包容力のある響きがあります。
ジャズのスタンダードナンバーが持つ、
少しノスタルジックでロマンチックな雰囲気を表現するのに、
このFの「温かいトーン」は最適なのです。
構造も、響きも、すべてが「理にかなっている」
難しいことは後回しでいい
構造(コード進行)が理解しやすく、
なおかつ楽器の構造上も一番いい音が鳴る。
これほど練習に適したキーは他にありません。
まずは理屈抜きに、Fのキーでピアノを鳴らしてみてください。
「あ、なんかいい音だな」「弾きやすいな」
その直感的な「快感」こそが、練習を長く続けるためのエネルギーになります。
Fのキーはピアノと仲良くなれる
「F」は、ピアノと仲良くなるための最短ルートです。
その温かい響きに包まれながら、
無理なくジャズの扉を開いていきましょう。
Music Space サヴァサヴァでは、
そんな「弾いていて気持ちいい」練習法を大切にしています。
野口 尚宏

