「弾き語り」は最強の練習法。歌うと楽器が劇的に上手くなる理由

ドラム、ピアノ、ギターを弾きながら楽しそうに歌うミュージシャン:歌うことで楽器のスキルが向上する様子

「私はボーカルじゃないから、歌はちょっと…」
そう言って、楽器を弾くことだけに専念していませんか?

実は、ドラムであれ、ピアノであれ、ベースであれ、
「演奏しながら歌う」という行為は、
単なるパフォーマンスの一種ではありません。
それは、あなたの楽器演奏のレベルを一段階も二段階も引き上げる、
最強のトレーニング方法なのです。

ドラマー・ベーシストへ:曲の迷子にならない

ドラムやベースを叩きながらメロディを歌ってみてください。
最初は難しいはずです。
手足のリズムと、歌のリズムが異なるからです。

しかし、これが出来るようになると、
「曲の構成(フォーム)」が身体の中に完全にインストールされます。
「今、何小節目だっけ?」と頭で数える必要がなくなります。
歌うことで、メロディの抑揚に合わせて自然にフィルインを入れたり、
ダイナミクス(強弱)をつけたりできるようになるのです。

ピアニスト・ギタリストへ:指運動からの脱却

ピアノやギターは、息を吸わなくても音が鳴る楽器です。
だからこそ、つい隙間なく音を詰め込みすぎて、息苦しい演奏になりがちです。

自分でフレーズを歌いながら弾くと、
必ず「息継ぎ(ブレス)」が必要になります。
その呼吸のタイミングでフレーズが区切られるため、
演奏に自然な「間」と「歌心」が生まれます。
「指だけで弾く音」と「歌いながら弾く音」は、説得力が全く違うのです。

究極のマルチタスク

演奏しながら歌うことは、脳にとって高度なマルチタスクです。
「手足のコントロール」と「声のピッチコントロール」を同時に行うことで、
脳内の回路が活性化し、四肢の独立性(インディペンデンス)が飛躍的に高まります。

最初はハミングや鼻歌で構いません。
自分の出している音と、自分の声がリンクした時、
楽器はまるで「自分の体の一部」になったかのように自由に響き始めます。

上手な歌である必要はありません。
音程が少し外れても大丈夫。
大切なのは、楽器という「外部の道具」と、
声という「内部の楽器」を繋げることです。

今日からの練習では、ぜひ恥ずかしがらずに、
そのメロディを口ずさみながらプレイしてみてください。
きっと、今まで聞こえなかった音楽の景色が見えてくるはずです。

野口 尚宏