「弾いて歌う」ジャズマンの孤独と自由。日本のシーンの中で

スポットライトを浴びてピアノの弾き語りをする男性ジャズミュージシャン:日本のシーンにおける希少なスタイル

日本のジャズクラブやライブハウスに行くと、あることに気づきます。
それは、ステージに立つ人が「楽器を演奏する専門家(インストゥルメンタリスト)」か、
「マイクを持って歌う専門家(ボーカリスト)」のどちらかに、
はっきりと分かれていることが多い、ということです。

特に男性の場合、「ジャズピアノも弾けて、歌も歌える」というスタイルは、
日本では本当に少ないのが現状です。
最近では藤井風さんのような素晴らしいアーティストが登場し、
ジャズのエッセンスを感じさせるピアノと歌で魅了していますが、
彼も「ジャズアーティスト」という枠には収まらない、
より広いポップスのフィールドで活躍されています。

純粋な日本のジャズシーンにおいて、「弾き語り」をする男性は、
確かに「珍しい存在」なのかもしれません。

確立された「女性ジャズボーカル」の世界

日本には、独特で、そしてしっかりと確立された「女性ジャズボーカル」の世界があります。
華やかで、繊細で、多くのファンを魅了するその文化は素晴らしいものです。
しかし、その一方で、男性がジャズを歌う、
しかも楽器を弾きながら歌うというスタイルは、
どこか「専門外」のような、少し特殊な立ち位置に見られがちです。

その結果、「楽器は楽器」「歌は歌」という分業が進み、
両方を一人でこなすスタイルが育ちにくかったのかもしれません。

海外では「歌うこと」がもっと自然

一方、海外に目を向けると、少し景色が違います。
ナット・キング・コールやレイ・チャールズ、
チェット・ベイカー(彼はトランペットですが)など、
歴史に残る偉大なジャズミュージシャンの多くが、
楽器の名手でありながら、同時に素晴らしいシンガーでもありました。

彼らにとって、「弾くこと」と「歌うこと」は、別の専門技術ではなく、
一人の人間の中にある「表現したい」という衝動の、
異なる出力方法に過ぎなかったのではないでしょうか。
ピアノで語りきれない想いが歌になり、歌で表現しきれない感情が指先から溢れる。
それが自然な形であり、一般的なスタイルとして受け入れられてきたのです。

弾くように歌い、歌うように弾く

僕は、ご指摘の通り、
日本のジャズシーンにおいては「割と珍しいタイプ」なのかもしれません。
ピアノに向かえば歌いたくなるし、歌えばピアノで伴奏したくなる。

でも、この「どっちつかず」にも見えるスタイルこそが、
僕の音楽の核であり、Music Space サヴァサヴァの個性でもあります。

ピアノを弾きながらマイクで歌う男性ジャズミュージシャンのモノクロ写真:日本では珍しい弾き語りスタイル
Youtubeライブ「タカヒロの即興ジャズラウンジ」の様子です♫

自分で弾くピアノの呼吸を感じながら、その上で自由に歌を泳がせる。
逆に、歌のフレーズが持つ自然な間(ま)に合わせて、ピアノの伴奏を変化させる。
この、一人の中で完結するリアルタイムのセッションは、
分業では決して生まれない、独特のグルーヴと心の静けさを生み出します。

ジャンルの垣根を越えて

「ジャズシンガー」や「ジャズピアニスト」という肩書きにこだわらず、
「ピアノを弾き、歌をうたう人」でありたい。
技術の高さで競うのではなく、
その人らしい「声」と「音」が重なり合う瞬間を大切にしたい。

日本でこのスタイルが珍しいのであれば、それはむしろ、
既存の枠にとらわれない自由な表現ができるチャンスでもあります。

「弾く」と「歌う」の間に境界線を引く必要はありません。
あなたの心の中にある「表現したい」という願いは、一つのはずです。

もしあなたが、ピアノも弾きたいし歌も歌いたいと思っているなら、
どうぞその気持ちを大切にしてください。
日本では珍しいかもしれませんが、
世界的に見ればそれはとても自然で、豊かな音楽の形です。

ここサヴァサヴァでは、「弾き語り」も大歓迎です。
あなたの指と声が紡ぎ出す、あなただけの音楽を、
一緒に探求していきましょう。

野口 尚宏