上手く弾けても、心に届かなければ“音”は残らない
音楽を学び始めた人が陥りやすいのが、
「正確に弾くことだけが大事」という思い込みです。
もちろん、技術は大切です。
でも技術そのものはゴールではありません。
プロフェッショナルが本当に大切にしているのは――
“お客さんの心に、なにが残るか” です。
上手い演奏は消えていきます。
心に触れた演奏だけが、静かに残っていきます。
アマチュアとプロの最大の違い
演奏技術そのものではありません。
プロとアマを分けるのは、視点です。
① アマチュアは“自分がどう弾けたか”を気にする
・ミスをしないように
・速く弾けるように
・強く歌えるように
・正確に、正確に…
どうしても 自分の出来栄え に意識が向いてしまいます。
これは自然なことですが、
この視点に留まっているうちは、
どれだけ上手く弾けても“自己完結の音”に留まります。
② プロは“聴き手がどう受け取るか”を考える
・このフレーズで安心できるだろうか
・この間の取り方で気持ちが広がるだろうか
・このテンポが一番伝わるだろうか
・響きが心に触れるだろうか
プロは、
自分ではなく、聴く人の時間 を大切にします。
技術はそのための手段です。
お客さんの心を動かすのは、誠実さと“意図”
どれだけ速く弾けても、
どれだけ正確でも、
心がこもっていなければ、音は空を滑っていくだけです。
演奏は“会話”です。
話す相手がいない独り言ではなく、
目の前の誰かに向かって語りかける。
それが音楽です。
① 誠実な音は、必ず届く
プロの演奏が心に残るのは、
音の奥にその人の誠実さがある からです。
丁寧に弾く。
思いを込める。
静かに息を吸う。
その“態度”がそのまま音色になります。
② 間違いは問題ではない。意図が大事
プロはミスを恐れません。
なぜなら、
ミスよりも「伝えること」の方が大切だと知っているから。
本当に伝えたい意図があれば、
少しの音の揺らぎやミスさえも
その人の“味”になります。
心に残る演奏をするために必要なこと
では、どうすれば“心に残る音”を奏でられるのでしょうか。
① 自分の気持ちを整えること
焦りや緊張のまま弾くと、
音にもそのまま反映されます。
ゆっくり息を吸って、
“今の自分”をそのまま受け止める。
そこから始まります。
② 音の向こうに人を感じること
「この一音は、誰に届いてほしいのか?」
その問いが、
演奏に一貫した方向を与えます。
③ 技術は使うために磨く
技術を磨く目的はただひとつ。
“心を届ける手段を増やすため” です。
その目的があると、
練習も演奏もまったく違うものになります。
プロフェッショナルとは、心の方向が定まっている人のこと
プロかアマチュアかを決めるものは、
年数でも収入でもありません。
自分の演奏が、
“誰かの時間をゆたかにするものかどうか”
その視点を持てるかどうかです。
技術は後からついてきます。
思いのある音を演奏する姿勢が大切
上手く弾けない日があってもかまいません。
ミスをしてもかまいません。
大切なのは、
なぜその音を届けたいのか。
誰に向けて弾いているのか。
その問いを持ち続けられること。
その姿勢こそが、
あなたの音をプロフェッショナルへと導きます。
野口 尚宏

