楽譜が読めないので習うのは無理だと思っています。
そう考えたまま、何年も過ごしてきた方がいます。
先に結論を書きます。
読めなくても始められます。
そして、始めたあとに読めるようになっていきます。
「読めない」と言うとき、何を想像しているか
楽譜が読めるかどうかを尋ねられたとき、
多くの方は「渡された譜面をその場で弾けること」を思い浮かべています。
初見演奏です。
これは訓練を重ねた人ができることであって、始めるための条件ではありません。
実際に必要なのは、時間をかければどの音か分かる、という程度のことです。
下の線から一つずつ数えて、ようやくその音にたどり着く。
お子さんも大人の方も、そこから始めています。
読む速さは、弾いているうちに上がっていきます。
先に速くしてから来ていただく必要はありません。
ジャズの譜面は、設計図ではなく手がかり
ジャズスタンダードの譜面には、
メロディーとコードネームしか書かれていないことがほとんどです。
どんな和音の配置で弾くか、どのリズムを刻むか、どこで音を減らすか。
そういったことは書かれていません。
つまり、譜面を正確に再現しても、
まだ音楽が半分もできていない状態です。
残りは自分で決めることになります。
ですからジャズでは、譜面を速く読む力よりも、
鳴っている音を聴いて判断する力のほうが先に必要になります。
譜面を丁寧に読み込んでいく学び方も、それはそれで素敵なことです。
ただ、ジャズの入り口はそこではないというだけの話です。
読めないまま来た方は、何から始めるのか
音を出すことから始めます。
そして、自分が今出した音がどう鳴っているかを聴きます。
この作業が、実は一番難しいところです。
ピアノでも歌でも、上達の鍵は自分の音を把握して、
頭の中にある理想の音との違いを覚えておけるかどうかにあります。
楽譜が読めるかどうかは、ここには関係がありません。
コードネームは、五線譜よりも先に覚えることが多いです。
Cm7、F7といった記号は、譜読みというより単語を覚える感覚に近く、
覚えた分だけその日のうちに使えます。
実用の順番としては、こちらのほうが早いのです。
読めるようになる道は、始めたあとに開きます
読めないまま始めた方が、
そのままずっと読めないわけではありません。
楽譜を介さずに音をとらえることを進めながら、
並行して教材も少しずつ使っていきます。
使っているのは「バイエル」と「ピアノアドベンチャー」です。
バイエルは古い教材だと思われがちですが、
指もとを見ずに音を認識できるようになるという一点において、
非常によくできています。
値段も手頃です。
クラシックピアノの教材という枠に収めてしまうのがもったいないくらいの本だと思っています。
ただ、バイエルはしばらくの間ト音記号だけで進みます。
そこで「ピアノアドベンチャー」を並行して使います。
こちらはヘ音記号から始まりますし、ジャズ寄りのコードの知識も自然に入ってきます。
二冊を同時に進めることで、右手と左手、記号と和音が偏らずに入っていきます。
気がつくと読めるようになっています。
楽譜を使わない教室というわけではありません。
楽譜が悪いのではなく、楽譜から入らなければ音楽を始められない、
という思い込みが要らないだけです。
順番が逆なのです。
読めるようになってから音楽を始めるのではなく、
音楽を始めてから読めるようになる。
お子さんもそうやって進んでいきますし、大人の方も同じです。
楽譜は音楽の入場券ではありません。
始めたあとに、少しずつ手に馴染んでいく道具のひとつです。
読めないことを理由に、
入り口の前で立ち止まっている時間はもったいないと思います。
何ができないかを一人で判断するのは、案外難しいものです。
できることとできないことの線引きは、
一緒に音を出してみればすぐに分かります。
まずはそこからお話ししませんか。
Music Space サヴァサヴァ
野口 尚宏

