共演者が変わると、自分が変わる|合わせる意味

暖かな光の部屋で、男性のピアノと女性のベースが向き合い、ベースから伸びた光が触れた地点から男性の音の流れが新しい方向へ枝分かれしていく水彩アニメ風イラスト。下部中央に「一人では出てこない音が、そこにある。」の白いテキスト。

一人で弾いていると、だんだん同じになる

家で一人、練習を続けている。

それなりに弾けるようにもなった。
でも、あるとき気づきます。

いつも同じような弾き方をしている。

似たフレーズ。
似たテンポ。
似た終わり方。

新しい曲をやっても、
結局いつもの自分の形に
収まってしまう。

これは、あなたの限界では
ありません。

一人で弾いているという
条件から来ています。

一人だと、自分の中の答えしか出てこない

一人で演奏しているとき、
次に何をするかを決めるのは
全部自分です。

自由に見えますが、
実は狭い状態です。

選べるのは、
自分の中にあるものだけ。

そして人は、
放っておくと
慣れた選択肢を取ります。

心地よいから、
そこへ戻ってしまうのです。

だから、一人の練習を
どれだけ積んでも、
自分の輪郭からは
なかなか出られません。

相手の音は、こちらに問いを投げてくる

ところが、誰かと合わせると、
この状況が一変します。

相手が音を出す。

その瞬間、
あなたの前にある選択肢が
組み替わります。

さっきまで自然だった続きが、
もう合わなくなる。

いつもの手が使えない。

そうすると、
普段なら選ばない方向へ
手を伸ばすことになります。

相手の音は、
「あなたはどうする?」という
問いなのです。

問われるから、
考えたことのなかった答えが
出てきます。

相手が違えば、開く場所が違う

面白いのは、
相手によって
引き出されるものが違うことです。

音数の多い人と組むと、
自然と自分は
引くようになります。

すると、
普段より少ない音で
成立させる工夫が生まれる。

逆に、静かな人と組むと、
自分がもう少し
前に出ることになります。

そのとき初めて、
自分にそんな押し出す力が
あったことに気づきます。

強い人と組むか、
柔らかい人と組むか。
それだけで、
自分の別の面が開きます。

一人では絶対に出てこなかった自分

ここが、いちばん
お伝えしたいところです。

誰かと合わせて出てきた音は、
相手のものではありません。

あなたの中から出てきた、
あなたの音です。

ただ、一人でいる限り
永久に出てこなかった音です。

相手は、
あなたに何かを与えたのではなく、
あなたの中にあったものを
引き出しただけです。

だから、共演というのは
相手のためだけの行為では
ありません。

自分に出会うための
手段でもあります。

「上手い人とやると上手くなる」理由

よく言われることがあります。

「自分より上手い人と
やったほうがいい」

これは本当ですが、
理由はたぶん
思われているのと違います。

技を盗めるから、
ではありません。

相手が出してくる音の質が高いと、
それに応えようとして、
自分の中の
使っていなかった部分に
手が伸びるからです。

普段の自分では
絶対にやらない反応を、
その場で強いられる。

その一回が、
家での何時間分にも
相当することがあります。

合わせるのが怖いのは、当然です

とはいえ、
人と合わせることには
怖さがあります。

迷惑をかけるのではないか。
下手だと思われるのではないか。
ついていけないのではないか。

その不安は、
まったく自然なものです。

ただ、一つだけ
知っておいてほしいことがあります。

合わせるということは、
相手についていくことでは
ありません。

同じ場所にいて、
音を出すことです。

一音だけでも、
そこに参加していることに
変わりはありません。

相手も、あなたに変えられています

最後に、忘れがちなことを
書いておきます。

この作用は、
一方通行ではありません。

あなたが相手に変えられるとき、
相手もまた、
あなたによって変えられています。

あなたが出した音が、
相手の中の
眠っていた何かを
起こしているかもしれない。

経験の多い少ないは
関係ありません。

あなたがそこにいるだけで、
その音楽は
あなたがいなければ
生まれなかったものになります。

その一回を、ここで

一人での練習には、
限界があります。

どれだけ積み上げても、
相手からしか受け取れないものが
あるからです。

ただ、いきなり知らない場所へ
飛び込むのは
ハードルが高いと思います。

「その音でいいんですよ」
「今、面白い返し方でしたね」
そう受け止めてもらえる場所で
始められれば、
怖さはずいぶん減ります。

サヴァサヴァでは、
上手い下手を競うのではなく、
音を交わすためのセッションを
大切にしています。

まだ知らないあなたの音に、
ここで出会ってみませんか。

Music Space サヴァサヴァ
  野口 尚宏

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