オリジナリティは、狙って作れない。焦る前に。

暖かな光の部屋で、男性がありふれた楽譜に真剣に取り組み、その音が共通の門をくぐった先で指紋のような不規則で個性的な光の形になる水彩アニメ風イラスト。背景には別の形を生む同じ門が並ぶ。下部中央に「違いは、狙って作れない。」の白いテキスト。

「人と違うことをしなければ」という焦り

音楽をやっていると、
ある時期からこう思い始めます。

「このままでは、
ただの真似で終わってしまう」

「自分にしかできない何かを
見つけないといけない」

その焦りは、
とてもよくわかります。

そして、
時代の空気とも無関係では
ありません。

今日は、その焦りの扱い方に
ついて書きます。

たしかに、オリジナル性が問われる時代です

まず、前提は正しいと思います。

今は、平均的に上手いものが
どんどん手に入る時代です。

整った演奏も、
それらしい伴奏も、
技術の力で
いくらでも作れるようになりました。

だからこそ、
「その人にしか出せないもの」の
価値が上がっています。

この認識自体は、
間違っていません。

問題は、そのあとです。

狙って作った「違い」は、たいてい誰かの真似

「人と違うことをしよう」と
意識して演奏すると、
何が起きるでしょうか。

変わったことをやろうとする。
珍しい音を入れてみる。
普通はやらない崩し方をしてみる。

ここに、落とし穴があります。

「変わっている」というのは、
すでに存在する型です。

誰かがやって、
変わっていると認識されたから、
それが変わったこととして
成立している。

つまり、変わったことを狙うのは、
「変わった人」の真似を
していることになります。

普通を真似るか、
変わっているのを真似るか。
どちらにしても、
真似から出られていません。

違いは、目標ではなく残りかす

では、独自性はどこから来るのか。

結論を書きます。

独自性は、目指して
手に入れるものではなく、
取り組んだあとに
残ってしまうものです。

ある曲に、真剣に取り組む。
憧れの演奏に、本気で寄せていく。

それでも、
どうしても同じにならない部分が
出てきます。

体の作りが違う。
これまで聴いてきたものが違う。
心地よいと感じる場所が違う。

その、どうしても
消せなかった部分。

それがあなたです。

だから、独自性は
足して作るのではなく、
削っても残ったものとして
現れます。

だから、共通の課題に取り組む

ここで、
ジャズスタンダードの出番です。

スタンダードは、
誰もが取り組む共通の課題です。

メロディも、コード進行も、
すでに決まっています。

一見すると、
独自性とは
正反対のものに見えます。

でも、条件がそろっているからこそ、
残った差だけが
くっきり浮かび上がります。

もし全員が違うことをしていたら、
その違いが
曲のせいなのか、
その人のものなのか、
誰にも判別できません。

共通の課題は、
個性を測るための
基準線なのです。

制約が多いほど、その人が出る

これは、
音楽に限りません。

「何を書いてもいい」と言われると、
人はかえって
ありきたりなことを書きます。

選択肢が多すぎると、
頭の中にある既製品を
取り出してしまうからです。

逆に、条件が細かく決まっていると、
既製品では収まりません。

その場で工夫するしかなくなる。

そして、その工夫の仕方に
その人が出ます。

制約は、
個性を縛るものではなく、
個性を絞り出す装置です。

焦りは、比較から生まれています

もう一つ、
正直な話をします。

「人と違うことをしなければ」
という焦りは、
音楽から出てきたものでは
ありません。

比較から出てきています。

誰かの演奏を見て、
自分と比べて、
足りないと感じる。

今は、
いくらでも人の演奏が
目に入る時代です。

比べる材料には
事欠きません。

でも、比較から生まれた焦りは、
比較でしか
満たされません。

だから、いつまでも
終わらないのです。

あなたの違いは、もう出ています

最後に、
いちばん伝えたいことを書きます。

あなたの独自性は、
これから作るものではありません。

もう、出ています。

同じ曲を弾いても、
あなたの演奏は
ほかの誰とも違います。

ただ、本人にだけ
それが見えないのです。

自分にとって当たり前のことは、
特徴として
認識できないからです。

探しに行く必要はありません。
すでにあるものに
気づけばいいだけです。

あなたにしかない部分を、一緒に見つけませんか

とはいえ、
自分の当たり前を
自分で見つけるのは、
ほぼ不可能です。

当たり前だからこそ、
目に留まりません。

「そこの間の取り方、
あなたにしかないものですよ」
そう外から言ってもらえて初めて、
自分の特徴が
特徴として見えてきます。

サヴァサヴァでは、
変わったことをやらせるのではなく、
その方がすでに持っているものを
見つけて伝えることを
大切にしています。

焦って探しに行く前に、
すでにあるものを
確かめてみませんか。

Music Space サヴァサヴァ
   野口 尚宏

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