音楽が難しかったのではない|挫折した方へ

暖かな部屋に二つの扉が並び、灰色の楽譜の線で塞がれた狭い扉から離れ、黄金の光があふれる広い扉へ向き直る女性を描いた水彩アニメ風イラスト。下部中央に「難しかったのは、音楽ではなく入り口。」の白いテキスト。

「何か違う」と感じたまま、離れた

学校の音楽の授業。
子どもの頃のピアノのレッスン。

そこで音楽を好きになった方は、
本当に幸運だと思います。

でも、そうでなかった方も
たくさんいます。

音符を読む。
指番号を守る。
間違えないように弾く。

やっているうちに、
ふとこう思う。

「何か違う」
「音楽って、
そんなに難しいものなの?」

その違和感を抱えたまま、
いつのまにか離れてしまった。

今日は、そういう方に向けて
書きます。

その違和感は、間違っていませんでした

まず、いちばん伝えたいことから
書きます。

あのとき感じた違和感は、
正しかったと思います。

音楽は本来、
あんなに難しいものではありません。

もともと音楽は、
言葉を持たない時代から
人が自然にやってきたことです。

読み書きより、
ずっと前からありました。

それが難解に感じられたのなら、
音楽そのものではなく、
そこへの入り方の問題です。

「自分には向いていない」と
思う必要は、
まったくありませんでした。

入り口が、一つしかなかった

では、何が起きていたのか。

私たちが最初に教わる音楽は、
たいてい同じ道筋をたどります。

楽譜を読む。
書かれた通りに再現する。
合っているかを確かめる。

これは、
正しい方法の一つです。

この道で花開く人も、
もちろんたくさんいます。

ただ、それが
唯一の入り口として
示されてしまうと、
合わない人は行き場を失います。

そして、
「この道が合わなかった」ではなく、
「音楽が合わなかった」と
受け取ってしまう。

ここに、大きな取り違えが
あります。

先生が悪かったわけではありません

誤解のないように
書いておきます。

これは、学校の先生や、
当時の指導者を
責める話ではありません。

学校では、
何十人もの生徒に
一度に伝えなければなりません。

そのためには、
誰にでも同じように示せる
共通の方法が必要です。

楽譜は、そのための
優れた仕組みです。

限られた時間の中で、
大勢に音楽を届けるための
現実的な選択でした。

ただ、その仕組みは
「一人ひとりに合った入り口を探す」
ようにはできていません。

構造上の限界であって、
誰かの責任ではないのです。

もう一つの入り口は、耳から入る

では、別の入り口とは
どんなものか。

耳から入る道です。

好きな音を聴く。
それを真似してみる。
気持ちよかったら、
もう一度やってみる。

読むことも、
合っているかを確かめることも、
この道では
先に来ません。

実は、これは
特別な方法ではありません。

私たちが言葉を覚えたのと
同じやり方です。

文法を習う前に、
聞いて、真似して、
話せるようになりました。

音楽も、本来は
そちらの順番でよかったのです。

「難しい」の中身が、違っていた

もう少し踏み込みます。

あのとき難しかったのは、
実は音楽ではなく、
その周辺のことだったはずです。

楽譜という記号を
すばやく変換する作業。
決められた指使いを守ること。
間違えずに最後まで通すこと。

これらは、確かに難しい。

でも、
心地よい音を選ぶことや、
気持ちを音に乗せることは、
そこまで難しくありません。

音楽の中で本当に楽しい部分に、
たどり着く前に
力尽きてしまった。

それが、多くの方に
起きたことだと思います。

大人になった今のほうが、向いています

そして、ここからが
良い知らせです。

耳から入る道は、
大人のほうが有利です。

子どもの頃と違って、
あなたにはもう
膨大な音楽の記憶があります。

何十年分の音が、
すでに体の中に入っている。

好きな音も、
心地よい響きも、
もうわかっているはずです。

その蓄積は、
子どもには絶対にない財産です。

あのとき合わなかった方こそ、
今なら別の道で
入っていけます。

もう一度、違う扉から

とはいえ、
一度つらい思いをした場所へ
戻るのは、
勇気がいることだと思います。

また同じことをさせられるのでは
ないか。
また「できない」と
感じるのではないか。

だからこそ、
「そのやり方はしなくていいですよ」
と最初に言ってくれる場所が
必要なのだと思います。

サヴァサヴァでは、
楽譜が読めなくても構いません。

耳で聴いて、真似て、
心地よい音を探すところから
始められます。

あのとき閉じた扉とは別の扉が、
ちゃんとあります。

今度は、そちらから
入ってみませんか。

Music Space サヴァサヴァ
  野口 尚宏

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