「今週も、ほとんど触れませんでした」
レッスンに来られたとき、
申し訳なさそうに
こう言われることがあります。
「今週も、ほとんど
触れませんでした」
仕事が終われば夜。
家に帰れば家のことがある。
休みの日は用事で埋まる。
気持ちはあるのに、
時間がない。
今日は、その状況を
意志の力で
なんとかしようという話ではありません。
環境のほうを
変えてしまう話です。
続かないのは、意志ではなく設計の問題
まず、はっきりお伝えします。
練習が続かないのは、
やる気がないからではありません。
大人には、
意志だけでは越えられない
現実があります。
疲れて帰ってきた夜に、
「よし、練習しよう」と
自分を奮い立たせる。
それを毎日続けられる人は、
ほとんどいません。
だから、根性で
解決しようとしないことです。
やる気を出さなくても
手が伸びてしまう環境を、
先に作ってしまう。
これが、いちばん現実的な方法です。
楽器を、片付けない
いちばん効果があるのは、
拍子抜けするほど
単純なことです。
楽器を、出しっぱなしにする。
蓋を開けたままにしておく。
椅子を出したままにしておく。
楽譜も、開いたまま
置いておく。
たったこれだけで、
練習の開始までの手間が
ほぼゼロになります。
逆に、片付けてしまうと、
楽器を出す、譜面を探す、
という工程が挟まります。
その数十秒の手間が、
疲れた夜には
とてつもなく重く感じられます。
人は、面倒なことを
やらない生き物です。
面倒でなくしてしまえば、
意志は要りません。
時間ではなく、きっかけを決める
次に、多くの方がやってしまう
失敗があります。
「毎晩九時から練習する」と
時間で決めることです。
これは、たいてい崩れます。
大人の予定は、
思い通りに進まないからです。
そして一度崩れると、
「今日もできなかった」という
記録だけが残ります。
おすすめしたいのは、
時間ではなく
きっかけに結びつけることです。
朝、コーヒーを淹れたら。
お風呂から出たら。
子どもを寝かせたら。
すでに毎日必ずやっている行動の
すぐ後ろにくっつけると、
時計に左右されずに
続いていきます。
一回を、思い切り短く設計する
そして、一回の練習を
短く設計してください。
五分で構いません。
「一時間やらないと意味がない」
と思っていると、
一時間取れない日は
ゼロになります。
そして、
ゼロの日が続くと
だんだん遠ざかっていきます。
五分でいいと決めておくと、
どんな日でも
手が届きます。
そして不思議なもので、
座ってしまえば
三十分弾いている日も出てきます。
重いのは、いつも
座るまでの部分です。
音が出せない時間帯の選択肢
もう一つ、大人特有の壁があります。
帰宅が遅く、
音を出せる時間帯に
家にいない、という問題です。
この場合、
やれることを分けて考えます。
音を出せる短い時間には、
実際に音を出さないと
できないことをやる。
音を出せない時間には、
譜面を眺める。
音源を聴く。
指の形だけ確かめる。
頭の中で歌ってみる。
ヘッドホンが使える楽器なら、
その選択肢もあります。
音を出せないことは、
練習できないこととは
同じではありません。
家族への配慮も、環境の一部です
意外と見落とされがちなのが、
この点です。
家族がいる場合、
「うるさいと思われていないか」
という気持ちが、
練習を遠ざけます。
技術的な問題ではなく、
心理的な問題です。
後ろめたさを抱えたままでは、
集中もできませんし、
長続きもしません。
だからこそ、
先に話しておくことです。
いつごろ、
どのくらいの時間
音を出したいのか。
了解を得ておくだけで、
気持ちがずいぶん軽くなります。
家族の理解も、
立派な練習環境です。
完璧な環境を、待たないでください
最後に、大切なことを。
「良い楽器を買ってから」
「防音の部屋ができてから」
「もう少し落ち着いてから」
そう考えていると、
その日はなかなか来ません。
条件が整うのを待つより、
今ある条件の中で
始めてしまうほうが、
結果的にずっと先へ進めます。
五分の練習でも、
続いていれば
確実に積み上がります。
環境は、
あとから整えていけばいいのです。
あなたの生活に合う形を、一緒に考えませんか
とはいえ、
どんな環境が自分に合うのかは、
人によってまるで違います。
生活のリズムも、
住まいの事情も、
使える時間も、
一人ひとり別のものだからです。
「その生活なら、
ここに五分挟めそうですね」
そう一緒に考えてくれる人がいると、
続けられる形が見つかります。
サヴァサヴァでは、
練習してこられなかったことを
責めることはありません。
その代わり、
あなたの毎日の中に
音楽が入る隙間を、
一緒に探していきます。
忙しい毎日のままで、
音楽を続けていきませんか。
Music Space サヴァサヴァ
野口 尚宏

