間違えたあと、どうするか|止まらない演奏

暖かな光の部屋で、女性が手を止めずにピアノを弾き続ける水彩アニメ風イラスト。流れる黄金の音符の列から一つだけ外れた淡い音があり、それが光の糸で次の音とつながって意図した曲線に変わる。下部中央に「外れた音は、次の音で決まる。」の白いテキスト。

音を一つ外した、その瞬間

演奏中に、音を一つ外す。

その瞬間、手が止まります。

頭が真っ白になって、
どこを弾いていたか
わからなくなる。

そして、最初から
弾き直してしまう。

心当たりのある方は、
多いと思います。

今日は、間違えないための話ではなく、
間違えたあとの話をします。

止めているのは、音ではありません

まず、はっきりさせたいことがあります。

あなたの演奏を止めたのは、
外れた音そのものではありません。

「今、間違えた」という判断です。

音が出た。
それを聴いて、違うと判断した。
判断した瞬間、意識が
音楽から離れた。

手が止まったのは、
そのあとです。

つまり、止まる原因は
指ではなく、
意識の向きにあります。

ここがわかると、
対処の方向が変わってきます。

外れた音は、一瞬で消える

考えてみてください。

外れた音は、
ほんの一瞬で消えます。

音楽が流れていれば、
次の音がすぐに
上書きしていきます。

ところが、そこで止まると、
状況が一変します。

音楽が途切れ、
沈黙が生まれ、
その場の全員の意識が
そこに集まります。

消えるはずだった一瞬が、
止まったことで
大きな出来事に変わってしまう。

音楽を壊しているのは、
間違いではなく
中断のほうなのです。

実は、毎日「止まる練習」をしている

ここで、少し厳しい話をします。

家での練習を
思い返してみてください。

間違えるたびに止まって、
その箇所を弾き直していませんか。

それ自体は、
丁寧でよい練習です。

ただ、それだけを続けていると、
もう一つ別のことも
同時に身についていきます。

「間違えたら、止まる」
という反応です。

何百回も繰り返せば、
体はそれを覚えます。

そして本番でも、
きちんと再現されてしまう。

止まってしまうのは、
気持ちが弱いからではありません。
そう練習してきたからです。

だから、通して弾く練習を混ぜる

対策は、はっきりしています。

止まらない練習も
取り入れることです。

練習の最後に一回だけ、
「何があっても止まらない」
と決めて通してみてください。

間違えても、
気にせず先へ進む。

細かいところが崩れても、
最後までたどり着くことだけを
目標にします。

丁寧に直す練習と、
止まらずに通す練習。

この二つは、
まったく別の能力を育てます。

片方だけでは、
本番で音楽が続きません。

外れた音の意味は、次の音が決める

そして、ジャズには
もっと積極的な考え方があります。

音そのものに、
正解も不正解もありません。

ある音が外れて聴こえるのは、
その音が単独で
浮いているからです。

でも、そのすぐあとに
半音上や半音下へ動けば、
その音は
「通り道の音」に変わります。

聴いている人には、
意図してそこを通ったように
聴こえるのです。

つまり、外れた音の意味は、
その音が鳴った時点では
まだ決まっていません。

次に何をするかで、
あとから決まるのです。

外した音を、もう一度鳴らしてみる

もう一つ、面白い方法があります。

外してしまった音を、
もう一度、わざと鳴らすのです。

不思議なことに、
一度だけなら事故に聴こえた音が、
繰り返した瞬間に
「そういうフレーズ」に
聴こえ始めます。

一回はミス。
二回目は主張。

人は、繰り返されたものを
意図的なものとして
受け取るからです。

もちろん、いつでも
使える手ではありません。

ただ、こういう選択肢を
知っているだけで、
間違えた瞬間の恐怖は
かなり軽くなります。

逃げるのではなく、
引き受けて進む。

それができたとき、
間違いは
音楽の一部になります。

止まらずに進む力を、一緒に育てませんか

とはいえ、
一人で練習していると、
止まらずに進むのは
難しいものです。

誰も聴いていないと、
つい戻りたくなります。
きれいに弾き直せてしまうからです。

「今、止まりませんでしたね」
「さっきの音、うまく拾えていましたよ」
そう見ていてくれる人がいると、
止まらずに進む感覚が
体に残っていきます。

サヴァサヴァでは、
間違えないことよりも、
間違えたあとも音楽を
続けられることを大切にしています。

間違いを恐れない演奏を、
ここから始めてみませんか。

Music Space サヴァサヴァ
   野口 尚宏

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