ジャズに詳しくないと、楽しんではいけないのでしょうか
ジャズという言葉を聞くと、
少し身構えてしまう方もいるかもしれません。
難しそう。
専門的そう。
詳しい人だけが楽しむ音楽のように感じる。
何を聴けばよいのか分からない。
そんなふうに思うことはないでしょうか。
たしかに、ジャズには長い歴史があります。
偉大な演奏家もいます。
複雑なコードもあります。
即興演奏の語法もあります。
時代ごとのスタイルもあります。
それらを知ることで、
ジャズはより深く楽しめるようになります。
でも、最初から詳しくなければ、
ジャズに触れてはいけないわけではありません。
音楽を楽しみたい。
誰かと音を合わせてみたい。
会話するように、
自分の音を出してみたい。
もしその気持ちがあるなら、
もうその人の中で、
ジャズは静かに始まっているのではないでしょうか。
ジャズは、知識の量を競う音楽ではない
ジャズを好きになると、
いろいろな知識が増えていきます。
誰の演奏か。
どの時代の録音か。
どんなコード進行か。
どのスタイルに属するのか。
そういう知識は、
音楽を聴く楽しみを広げてくれます。
ただ、その知識が、
誰かを遠ざけるために使われると、
音楽は少し窮屈になってしまいます。
それはジャズではない。
ジャズはこうでなければいけない。
それを知らないなら、
まだジャズを分かっていない。
そんな言葉を前にして、
せっかく興味を持った人が、
そっと離れてしまうこともあるのではないでしょうか。
もちろん、歴史や語法を大切にすることは必要です。
でも、それは入口を狭くするためではなく、
音楽をより豊かに味わうためのものだと思います。
ジャズは、知識の量を競う音楽ではありません。
音を聴き、
反応し、
人と響き合うことの中に、
ジャズの大切な部分があるのではないでしょうか。
音を合わせたい気持ちの中に、ジャズの入口がある
ジャズを始めるきっかけは、
難しい理論でなくてもよいのだと思います。
この曲を誰かと一緒にやってみたい。
伴奏に合わせて、
少し自由に歌ってみたい。
ピアノでコードを鳴らしながら、
誰かのメロディを支えてみたい。
セッションで、
相手の音に返事をしてみたい。
そういう小さな気持ちの中に、
ジャズの入口があります。
ジャズは、
一人で完成させたものを見せるだけの音楽ではありません。
誰かの音を聴いて、
そこに自分の音を置いてみる。
相手が出した音に、
少し驚きながら、
自分の感じ方で返してみる。
そのやりとりの中で、
音楽は少しずつ動き始めます。
うまく説明できなくても、
「音で会話してみたい」と思う気持ちがあれば、
そこにはもうジャズの心があるのかもしれません。
ジャズの本質は、相互理解にある
ジャズの即興演奏では、
自分の音を出すことが大切です。
でも、それは、
自分だけが目立つこととは少し違います。
相手の音を聴く。
今のリズムを感じる。
周りの響きの中で、
自分の音をどこに置くかを考える。
それは、音による相互理解です。
言葉で説明しなくても、
相手がどこへ行こうとしているのかを聴く。
自分がどこへ向かいたいのかを、
音で少し伝えてみる。
そのあいだで、
一人では思いつかなかった音が生まれることがあります。
ジャズの面白さは、
正しい形を守ることだけではなく、
人と人が音を通して分かり合おうとするところにあるのではないでしょうか。
新しい感覚が呼び覚まされる音楽
ジャズは、
いつも予定どおりに進む音楽ではありません。
思っていたコード感と違う響きが返ってくることがあります。
自分が出した音に、
誰かが思いがけない反応をしてくれることがあります。
いつもなら選ばない音を、
その場の流れで選んでしまうこともあります。
そういう瞬間に、
自分の中の新しい感覚が呼び覚まされることがあります。
それは、上手いか下手かだけでは測れません。
知っているか知らないかだけでも測れません。
音楽の中で、
自分の感覚が少し広がる。
誰かの音によって、
自分の中になかった扉が少し開く。
そこに、ジャズの大きな魅力があります。
詳しくない人が楽しめることも、ジャズの力
サヴァサヴァには、
最初からジャズに詳しかった方ばかりが来られるわけではありません。
むしろ、
ジャズはよく分からないけれど、
なんとなく惹かれる。
セッションをしてみたい。
コードでピアノを弾いてみたい。
洋楽やジャズの歌を、
自分の声で歌ってみたい。
そういう気持ちから始める方もいます。
そして、少しずつ音を出し、
誰かと合わせ、
コードやリズムに触れていく中で、
ジャズを楽しめるようになっていきます。
詳しくないから楽しめないのではありません。
楽しみたい気持ちがあるから、
少しずつ詳しくなっていくのです。
その順番でよいのだと思います。
入口を狭くすると、音楽は痩せていく
どんな音楽にも、
大切にされてきた歴史や形式があります。
それを学ぶことは、
音楽への敬意でもあります。
ただ、その敬意が、
誰かを排除する言葉に変わってしまうと、
音楽は少し痩せていくように感じます。
これはジャズではない。
この聴き方は浅い。
この演奏を知らないなら語れない。
そんな空気が強くなるほど、
新しく興味を持った人は、
入ってきにくくなります。
ジャズは、本来もっと開かれた音楽だったのではないでしょうか。
違う背景を持つ人たちが出会い、
互いの音を聴き、
その場で新しい形を作っていく。
そういう音楽だからこそ、
入口を狭くしすぎないことが大切なのだと思います。
ジャズらしさより、音で関わる気持ちを大切にする
ジャズらしいフレーズを学ぶことは大切です。
コード進行を理解することも、
リズムの感覚を育てることも、
とても大切です。
けれど、それらは、
人を遠ざけるための条件ではありません。
むしろ、
音で人と関わるための道具です。
相手の音を聴きたい。
自分の音で返してみたい。
決められた形だけではなく、
その場で生まれるものを感じてみたい。
その気持ちがあるなら、
ジャズはもう遠い音楽ではありません。
ジャズらしさを身につける前に、
まず音で関わってみること。
そこから、ジャズの理解は少しずつ深まっていくのではないでしょうか。
ジャズは、始めたい人の中ですでに始まっている
ジャズに詳しくなくても、
音楽を楽しみたい気持ちがある。
誰かと音を合わせてみたい。
会話するように演奏してみたい。
知らない響きに出会って、
自分の感覚を少し広げてみたい。
その気持ちは、
とても大切なジャズの入口です。
知識は、あとから少しずつ増えていけばよいのだと思います。
理論も、実際に音を出しながら、
必要なところから身につけていけばよいのではないでしょうか。
まずは、音を聴く。
音を出してみる。
誰かの音に、
自分の音でそっと返してみる。
そこから、ジャズは始まります。
もし、ジャズは難しそうだと感じながらも、
音を合わせて会話するように音楽をしてみたい気持ちがあるなら、
レッスンやセッションの中で、
その入口を一緒に探してみませんか。
詳しさよりも、
まず音に耳を澄ませることから。
あなたの中で始まっているジャズを、
一緒に少しずつ育てていけたらと思います。
Music Space サヴァサヴァ
野口 尚宏

