音は、実はたった12個しかない
世界中のあらゆる音楽、
クラシックもジャズもポップスもロックも、
すべてたった12個の音でできています。
ドレミファソラシとその間の半音を合わせて、12音。
それ以上は存在しません。
さらに、ひとつのキー(調)の中で使える音は、
基本的に7個だけです。
臨時記号が入っても、せいぜい10個まで。
つまり、どれだけ自由に弾こうとしても、
選べる音には限りがあるのです。
この事実、当たり前のようで、
深く考えたことがある人は少ないかもしれません。
でもここに、音楽表現の大切な真理が隠れています。
たくさん弾けることが、表現力ではない
行き詰まっている演奏者の方からよくご相談を受けるのが、
「もっと音を足したい」
「もっと難しいフレーズを弾きたい」
「もっとたくさんの引き出しがほしい」
という悩みです。
でも不思議なことに、
プロの演奏家ほど、音を「減らす」ことに意識を向けています。
なぜなら、使える音が限られている以上、
何を弾くかよりも何を弾かないかの方が、
表現を決定づけるからです。
音を詰め込めば詰め込むほど、
一つひとつの音の意味が薄まります。
逆に、ひとつの音を選び抜いて鳴らすと、
その音は驚くほど雄弁に語り始めます。
「間」という名の音
音楽には、音だけでなく「鳴らさない時間」、
間(ま)があります。
実は、この間こそが音楽の命です。
休符は「音がない時間」ではなく、
「次の音のためにエネルギーが溜まる時間」です。
優れた演奏家の演奏を聴くと、
音よりも間の使い方が際立っていることに気づくはずです。
ひとつの音を鳴らし、そのあと少し沈黙する。
その沈黙があるから、次の音が生きます。
間を恐れず、あえて「弾かない」選択ができるかどうか。
それが、音楽表現の深さを決めていきます。
制約があるから、自由がある
「12音しかない」「1キーで7音しか使えない」という事実は、
一見、制約のように感じるかもしれません。
でも実は逆です。
制約があるからこそ、
その中での選択に意味が生まれます。
無限の選択肢の中から選ぶのではなく、
限られた素材の中から「今この瞬間、何を選ぶか」を考える。
その過程こそが、音楽表現の本質です。
サヴァサヴァが大切にしている「論理という地図」も、
ここに繋がります。
地図があるから、どこへ行かないかも見えてきます。
どの音を使わないかが見えたとき、
初めて、どの音を鳴らすかが決まります。
「弾かない勇気」から、始めてみませんか
今度、楽器に向かうとき、あるいは歌うとき、
少しだけ試してみてください。
「一音減らせるところはないか」
「ここは休符にできないか」と。
引き算してみると、
自分の音楽が驚くほどクリアになることに気づくはずです。
音の数が減ったのに、むしろ表現は豊かになる。
その不思議な逆転現象こそが、音楽の美学です。
サヴァサヴァでは、
「何を弾くか」と同じくらい
「何を弾かないか」を大切にしたレッスンを行っています。
音楽表現に行き詰まりを感じている方も、
ぜひ一度スタジオへ来てみてください。
引き算することで、
あなたの音楽はきっと、もっと豊かになります。
野口 尚宏

