自分のためだけじゃない。音楽は「誰かに伝える」ことで深く熟成していく。

温かみのある水彩画風のイラスト。スタジオで、大人の経験者が初心者に優しく楽器を教えている。経験者の手から「音楽の知識の種」を象徴する小さな光が初心者に手渡され、その瞬間、経験者自身の周りの光が芳醇なワインのように深く豊かな色に広がり、教えることで自分自身の音楽が熟成される様子を表現している。画像下部には「伝えることで、音楽は熟成する。」というテキストが書かれている。

「もっと指が速く動くように」
「もっと高い声が綺麗に出るように」
大人になってから音楽を学ぶ方の多くは、とても熱心で真面目です。
昨日より今日、今日より明日と、
自分の技術を高めるために日々練習を重ねる姿は本当に素晴らしいものです。

しかし、もしあなたが「自分の技術を向上させること」だけを目標にして、
少し行き詰まりや孤独を感じているのなら、
音楽のもう一つの、そして最大の喜びに目を向けてみませんか?

それは、あなたがこれまでに身につけた経験や技術を
「誰かに伝え、教える」という喜びです。

「私なんてまだまだ人に教えるレベルじゃないから…」
と謙遜する必要は全くありません。

例えば、レッスンで気づいた「息をスッと吸うと歌いやすい」
という小さなコツを、一緒に学ぶ仲間にそっと共有してみる。
あるいは、自分が弾けるようになった簡単なコードを、
音楽に興味を持ち始めた家族や友人に弾いて見せてあげる。

そうやって、あなたが苦労して手に入れた
「音楽の種」を誰かの手のひらにそっと手渡したとき。
その人の世界に新しい音楽の喜びが生まれ、笑顔が咲きます。
音楽は一人で抱え込んでいるときよりも、
誰かと分かち合い、伝播していく瞬間にこそ、
最も美しいエネルギーを放つものなのです。

そして、誰かに音楽を伝えることの最大の魔法は、
「教えた自分自身の音楽が、一番深く熟成される」
という点にあります。

人は、自分が何となく感覚でできていることを
「他人に分かるように言葉にして伝える」とき、
頭の中をもう一度きれいに整理しなければなりません。
「なぜここでこの音を弾くのかな?」
「どうしてこのリズムが心地よいのかな?」
誰かに教えるために自分自身に問いかけるそのプロセスが、
あなたの感覚を確信に変え、
音楽の理解をより立派で揺るぎないものへと深めてくれます。

誰かのために言葉を紡ぎ、
音を鳴らした経験は、
あなたの音楽の「中身(表現力や優しさ)」となって、
熟成したワインのように深い味わいをもたらすのです。

岸和田のMusic Space サヴァサヴァは、
先生から生徒へ一方通行で技術を教え込むだけの場所ではありません。
生徒さん同士が互いの音を聴き合い、
経験を分かち合い、
共に育っていく「温かい音楽のコミュニティ」でありたいと願っています。

あなたがこれまでの人生やレッスンで身につけてきた素晴らしい経験は、
誰かの背中を押す力を持っています。
完璧主義を手放して、まずは隣の仲間と、
あなたの「好き」や「気づき」を共有してみませんか?

誰かに伝えることで熟成されたあなたの音色は、
きっと今までで一番、深く優しく響くはずです。

野口 尚宏