アドリブは「何を弾くか」より「どんな音を出すか」。たった1音の響きが、次の扉を開く。

温かみのある水彩画風のイラスト。スタジオで目を閉じ、深くリラックスして1つの音(ロングトーン)を響かせる人物。その人物から、大きく美しく光り輝く「たった1つの音の球体」が広がっている。その美しい響きの球体から自然と小さな光の道や音符が枝分かれし、良い音が次のインスピレーションを導き出す様子を表現している。画像下部には「美しい1音が、次を導く。」というテキストが書かれている。

ジャズピアノや洋楽ボーカルで
「さあ、自由にアドリブをしてみてください」と言われたとき。
多くの人は「どんなメロディを歌おうか」
「どのスケール(音階)を使おうか」と、
頭の中で必死に次の音を探し始めてしまいます。

しかし、頭で考えた音をただ並べるだけでは、
どこか不自然で、心に響かない演奏になってしまいがちです。

自由に音楽を紡ぎ出すために一番大切なこと。
それは、「次に出す音」を焦って探すことではなく、
今まさに自分が出している「1音の響き」に徹底的にこだわることなのです。

「アドリブ」と聞くと、
スラスラと流れるようなフレーズを想像するかもしれませんが、
原点はとてもシンプルです。
まずは、たった1音。
声であれば、一つの音を長く伸ばす「ロングトーン」で、
どれだけ深く、豊かに響く音を作れるかを探求してみましょう。

ピアノの鍵盤を一つ、丁寧に押し込み、
その音が空間に溶けていく余韻をじっと聴き届ける。
横隔膜をしっかりひろげて息を吸い込み、
自分の一番心地よい声帯の鳴りを見つけて、
まっすぐに声を響かせる。

どんな音を出すか(What)ではなく、
どのように音を響かせるか(How)。
この「音作り」の基礎こそが、すべての表現の土台になります。
もし、たった1音が美しく響いていなければ、
その後にどんなに複雑で素晴らしいフレーズを100個並べたとしても、
音楽は人々の心には届きません。

なぜ、1音の響きにこだわる必要があるのでしょうか。
それは、自分自身が出した「いい音」や「いい声」の響きそのものが、
あなた自身の耳と心を震わせ、
自然とインスピレーションを湧き上がらせてくれるからです。

深く響くロングトーンを出せたとき、
あなたの身体は「あ、この響き、すごく心地よいな」と感じます。
すると不思議なことに、「この心地よい響きのまま、
次は少しだけ上の音に移動してみようかな」
「次は少し優しく着地してみようかな」と、
自然に次の音への欲求が生まれてくるのです。

頭でひねり出したフレーズではなく、
自分が出した「美しい1音」に導かれるようにして、
次の音が紡ぎ出されていく。
これこそが、本物の直感的で生き生きとしたアドリブ(即興演奏)が生まれる瞬間です。

岸和田にあるMusic Space サヴァサヴァでは、
たくさんの音符を詰め込む前に、
まずはあなた自身の「音の出し方」にじっくりと向き合います。

「今の1音、すごく綺麗に響きましたね!
じゃあ、その響きのまま次の音に行ってみましょうか」

焦る必要はありません。
たった1音が持つ魔法の力を信じてみてください。
あなたが心から「いい音だ」と思える響きを見つけたとき、
アドリブの扉は自然と開き、
音楽はもっと自由に、もっと楽しくなるはずです。

野口 尚宏