音楽を「算数」のように捉えていませんか?
「1、2、3、4…あっ、ここで裏拍に入らなきゃ」
「ここのメロディは8分音符だから、正確に刻まないと」
大人になってから音楽を学ぼうとするとき、
私たちは無意識のうちに、音楽をまるで「算数」や
「パズル」のように捉えてしまうことがあります。
メトロノームの正確なカチカチという音に合わせて、
パズルのピースをはめ込むように音符を並べていく。
もちろん、基礎的なリズム感を養うことは大切です。
しかし、正解をなぞることにばかり気を取られていると、
いつの間にか演奏から生き生きとした表情が消え、
息苦しさを感じてしまうことはありませんか?
そんな時は一度、楽譜を閉じてみましょう。
そして、音楽が生まれる「もっと前の場所」に立ち返ってみるのです。
リズムとメロディの本当の正体
そもそも、音楽におけるリズムやメロディとは、
一体どこからやってきたのでしょうか。
私たちが日常で誰かと会話をするときを思い出してみてください。
嬉しいニュースを伝えるときは、自然と声のトーン(メロディ)が弾み、
言葉のテンポ(リズム)も軽やかになります。
逆に、悲しみや切なさを誰かに打ち明けるときは、
ポツリポツリと、言葉と言葉の間に深い「間(休符)」が生まれ、
メロディは緩やかに下降していきます。
そう、リズムの正体は私たちの「言葉の抑揚」であり、
メロディの正体は「相手に何かを訴えかけたい、
伝えたいという心の動き」そのものなのです。
「I love you」という言葉には、
それを伝えるための最も美しい自然なリズムがすでに宿っています。
それに無理やりメトロノームを当てはめて
「ワン・ツー・スリー」と割り振ってしまっては、
せっかくの想いが窮屈になってしまいますよね。
鍵盤で歌い、声で語りかける
歌を歌うとき、メロディラインを「音程」として正確になぞろうとするのではなく、
まずは目の前にいる誰かに向かって、
その歌詞を「言葉」として語りかけてみてください。
すると、どこで息継ぎをしたくなるか、どの単語を強く言いたくなるか、
自然な「あなただけのリズム」が見えてくるはずです。
これはジャズピアノでも全く同じです。
偉大なジャズピアニストたちは皆、指先で鍵盤を弾きながら、
心の中で、あるいは実際に口に出して「歌って」います。
彼らが奏でるアドリブフレーズがなぜあんなにも人の心を打つのか。
それは、彼らが音符を羅列しているのではなく、
鍵盤を通して私たちに「語りかけている」からに他なりません。
伝えたい想いがあれば、音楽は必ず届く
Music Space サヴァサヴァで一番大切にしているのは、
この「音楽を通じた対話」です。
リズムが少し走ってしまっても、テンポが揺らいでも構いません。
それは決して「間違い」ではなく、あなたの感情が動いた証拠です。
「上手く演奏しよう」とするプレッシャーを手放し、
「この想いを目の前の人に伝えたい」というシンプルな気持ちに立ち返ったとき。
あなたの言葉が持つ自然なリズムは、
必ず美しいメロディとなって、聴く人の心に深く、真っ直ぐに届きます。
音符を数えるのをやめて、まるで親しい友人に語りかけるように、
のびのびと音を紡いでみませんか?
野口 尚宏

