導入:一生懸命弾いても、音が小さい?
「フォルテ(強く)の記号があるから、指に力を入れて思いっきり叩こう!」
そうやって頑張れば頑張るほど、音は硬くなり、
指は疲れ、思ったほど大きな音が出ない……。
そんな経験はありませんか?
もしそうなら、あなたはピアノを「指の力」だけで弾こうとしているのかもしれません。
実は、プロのピアニストは、指の力などほとんど使っていません。
彼らが使っているのは、もっと巨大なエネルギー、
そう、「自分の体重(重力)」です。
ピアノは「指先」ではなく「体」で鳴らす
指の筋力 vs 体重
考えてみてください。指先の小さな筋肉の力と、
何十キロもあるあなたの体重。
どちらが鍵盤(ハンマー)を強く押し下げることができるでしょうか?
答えは明白です。
ピアノは構造上、打楽器に近い楽器です。
良い音、深みのある音を出すためには、指先で鍵盤を「押す」のではなく、
腕や上半身の重みを指先を通して鍵盤に「伝える」必要があります。
鍵は「斜め前」への意識
真上からでは、重みは乗らない
では、どうやって体重を乗せるのでしょうか?
多くの人がやりがちなのが、背筋を伸ばして「真上から」鍵盤を押そうとすることです。
しかし、これでは重力の方向と、鍵盤が下りる方向がずれてしまい、力がうまく伝わりません。
寄りかかるように、力を預ける
コツは「斜め前方に倒れかかるように弾く」ことです。
イメージしてみてください。
目の前にある重たい扉を、両手で押し開けようとする時、
あなたはどういう姿勢になりますか?
棒立ちで腕の力だけで押す人はいないでしょう。
きっと、体を斜め前に傾けて、自分の体重を扉に預けるようにして押すはずです。
ピアノも同じです。
鍵盤に対して、少し斜め上から寄りかかるようなイメージで、
腕の重みをストンと落とす。
すると、指は何の力も入れていないのに、
鍵盤の底までしっかりと重みが伝わり、驚くほど太く、豊かな音が鳴り響きます。
重力に身を任せて弾く
「頑張って弾く」のをやめて、「重力に身を任せて」みてください。
斜め前に体を預けるその感覚が掴めたとき、
あなたのピアノは、今までで一番楽に、そして一番自由に歌い始めるはずです。
野口 尚宏

