■ 同じコミュニティは“安心”と“停滞”を同時に生む
音楽の世界では、
同じ仲間・同じレベル・同じ価値観 のコミュニティに長く留まることで、
演奏そのものが停滞していく現象がよく起こります。
アマチュアでも、ジャズでも、プロの世界でも同じです。
人は安心を求めます。
しかしその“安心”が、
新しい発見や挑戦を遠ざけ、成長を止める原因になることがあります。
■ 刺激がなければ音は必ず丸くなる
音楽は、自分とは異なる価値観・技術を持つ人との出会いによって広がります。
- 違う緊張感
- 違うテンション感
- 違うリズム
- 違うバックグラウンド
こうした “他者からの刺激” がなくなると、
演奏は次第に丸くなり、音が固定化していきます。
同じ仲間、同じ曲、同じレベルだけで演奏していると、
フレーズも感覚も変化しないまま固まってしまうのです。
■ 同質性の高いコミュニティほど成長は止まる
心理学では、似た者同士が集まると成長が止まる現象を
「同質性の罠(ホモフィリー)」 と呼びます。
音楽でもまったく同じことが起こります。
- 自分と同じくらいの技量
- 同じ曲しかやらない
- 同じ価値観
- 同じ年齢層
- 同じ話題
- 同じ聴き方
これらが揃えば揃うほど、
向上心そのものが必要なくなってしまう のです。
■ “向上心を否定する空気”がもっとも危険
閉じたコミュニティでは、以下のような言葉が出やすくなります。
「そんなに頑張らなくてもいいよ」
「楽しくできれば十分」
「どうせ食べていけないし」
一見優しそうに聞こえますが、
これらは 成長を止める最も強い力 になります。
向上心のある人が“浮く”空気は、
音楽を深めたい人の心を静かに蝕みます。
■ 音楽が深まるのは“異質に触れた瞬間”
音楽教育の現場に長く立っていると、
本当に成長する人は “異質に触れ続ける人” だと感じます。
- 初めて会う人とセッションする
- 年齢の違う人と関わる
- 異なるジャンルを聴く
- 新しい価値観を取り入れる
- 自分より上のレベルと混ざる
このような ズレや衝突 が、
音楽を一気に開いてくれる瞬間になります。
■ 教室が変化し続ける理由
大阪・岸和田の Music Space サヴァサヴァ でも、
コミュニティは常に変化しています。
10年前、5年前、そして今。
生徒さんの年齢層も価値観もまったく違います。
これは、教室が停滞するのではなく、
変化を受け入れ続けている証拠 です。
変わるからこそ、音楽は新しい場所へ運ばれていきます。
■ 音楽は“変化の中”でしか育たない
音楽に本当に必要なのは、
- 向上心
- 多様性
- 新しい価値観
- 異なる人との出会い
- コミュニティの更新
- 変化を恐れない心
同じ仲間だけで盛り上がる音楽は、
どこかで必ず止まります。
しかし──
違う価値観に触れ続ける音楽は、
人生とともに深まり続ける。
音楽は「変化の中」でしか育たない。
これは、長くレッスンさせて頂き、たどり着いた、大切な真理です。
野口 尚宏

